【Excel初心者向け】データ分析入門:基本関数からグラフ作成まで解説

はじめに
日々の業務で、数字やデータを扱う機会が増えています。膨大なデータから意味のある情報を見つけ出し、業務改善や意思決定に役立てることができれば、仕事の質と効率が飛躍的に向上します。
多くの企業で標準的に使われているExcelは、実は優れたデータ分析ツールでもあります。高度な統計ソフトを導入しなくても、Excelの基本機能だけで多くの分析が可能です。
本記事では、Excel初心者やITに詳しくない事務職の方でも理解できるよう、Excelを使った基本的なデータ分析の方法を解説します。Excelの基本操作を応用して、日常業務ですぐに活用できるデータ分析の技術を身につけましょう。
なお、この記事は主にMicrosoft 365版のExcelを基に解説していますが、基本的な機能の多くはExcel 2019やExcel 2016などのバージョンでも同様に利用可能です。ただし、一部の画面表示や機能の名称が異なる場合があります。
Excelデータ分析の基本:初心者向け基礎知識
まず、データ分析とは何か、そしてExcelでどのような分析ができるのか、基本的な知識を確認しましょう。

データ分析とは何か?初心者にも分かりやすく解説
データ分析とは、単に数字を集めるだけでなく、その中から有益な情報やパターンを見つけ出し、適切な判断や行動につなげるプロセスを指します。例えば、月々の売上データを分析することで「どの商品がよく売れているか」「どの時期に売上が伸びるか」といった情報を得ることができます。
Excelでできるデータ分析の種類:集計から傾向分析まで
Excelでは以下のような分析が可能です:
- 基本的な集計分析: 合計、平均、最大値、最小値など、データの基本的な性質を掴むための計算。
- 傾向分析: 売上推移など、時間の経過に伴うデータの変化やトレンドを把握する。
- 比較分析: 複数の店舗間の売上比較など、項目や期間ごとの違いを明らかにする。
- 分類分析: : 顧客層別アンケート結果など、データを特定の条件で分類し、グループごとの特徴を把握する。
- 相関分析: 広告費と売上など、2つの項目間の関連性の強さを調査する。
このように、Excelにはデータ分析に役立つ基本的な機能が備わっています。特別なツールがなくても、身近なExcelで多くのことが可能です。」
Excelデータ分析のための準備:見やすいデータ形式と整理術

効果的な分析を行うためには、元となるデータを適切に準備・整理することが不可欠です。ここでは、その基本的な方法を見ていきます。
分析しやすいデータの形式とは?Excelでの基本ルール
データ分析を始める前に、データを適切な形式に整えることが重要です。理想的なデータ形式には、以下のような特徴があります。
- 1行目はヘッダー(項目名):各列が何を表すデータなのかを明確にするため。
- 1つのセルに1つのデータ:データを正確に集計・分析できるようにするため。
- セル内で改行しない:多くのExcel機能が改行を想定していないため。
- 結合されたセルがない:並べ替えやフィルタリング、計算が正しく機能するようにするため。
- データ範囲に空白行や空白列を含めない:Excelがデータ範囲を正しく認識できるようにするため。

データのクリーニング方法:Excel基本機能で効率化
実際のデータには、誤りや重複、不要な情報が含まれていることがよくあります。分析前にデータをクリーニングしましょう。
重複データの削除:
- データ範囲を選択
- 「データ」タブ→「重複の削除」をクリック
- 重複を確認する列を選択→「OK」
詳しい手順と応用例はExcelで重複データを簡単に削除する方法で解説しています。
エラーの修正:
数値が文字列として保存されている場合:
- 修正したいセル範囲を選択。
- エラー表示の▼マークをクリックして「数値に変換する」を選択

データの並べ替えとフィルタリング
並べ替え:
- データ範囲内をクリック
- 「データ」タブ→「並べ替え」
- 並べ替えの基準となる列と順序を指定
詳しい使い方と応用例はExcelで素早くデータを並べ替える方法で解説しています。
フィルタリング: 「フィルター」機能で特定の条件に合うデータのみを表示させる:
- データ範囲内をクリック
- 「データ」タブ→「フィルター」
- 列見出しの▼ボタンをクリックして、表示したいデータを選択
フィルター機能の活用法について詳しくはExcel初心者でもわかるフィルター機能の使い方をご覧ください。


データを整える一手間が、後の分析作業をスムーズにし、正確な結果を得るための土台となります。
作業効率アップ:覚えておきたい基本ショートカットキー
データ入力や編集、セルの移動などの操作を素早く行うために、以下の基本的なショートカットキーを覚えておくと作業効率が格段に上がります。
- Ctrl + C: 選択したセルや範囲をコピーします。
- Ctrl + V: コピーした内容を貼り付けます。
- Ctrl + X: 選択したセルや範囲を切り取ります。
- Ctrl + Z: 直前の操作を元に戻します(アンドゥ)。
- Ctrl + Y: 元に戻した操作をやり直します(リドゥ)。
- Ctrl + S: ファイルを上書き保存します。こまめな保存を心掛けましょう。
- F2: アクティブなセルを編集モードにします。
- Esc: セルの編集やダイアログボックスをキャンセルします。
これらを印刷して手元に置くのもお勧めです。
これら以外にも多くのショートカットキーがありますが、まずはこれらの基本操作を覚えるだけでも、作業時間を短縮できます。
【重要】データの保存とバックアップ
分析作業中は、予期せぬエラーやPCのトラブルで作業中のデータが失われてしまう可能性もゼロではありません。大切なデータを守るために、以下の点を心掛けましょう。
- こまめな上書き保存: 作業の区切りが良い時や、少し席を離れる前などに、Ctrl + S でこまめに上書き保存する習慣をつけましょう。
- 定期的なバックアップ: 特に重要なデータや、大きな変更を加える前には、「ファイル」タブの「名前を付けて保存」から別名のファイルとしてコピーを作成しておく(バックアップを取る)ことをお勧めします。これにより、万が一元のファイルに問題が発生しても、前の状態に戻すことができます。
Excel基本関数で集計・分析:SUM・AVERAGEの使い方
データの準備ができたら、次は基本的な関数を使ってデータを集計・分析してみましょう。まずは簡単な計算から始めます。
よく使う基本関数:SUM, AVERAGE, MAX, MIN, COUNT
Excelの関数を使えば、複雑な計算も簡単に行えます。初心者におすすめの基本関数は:
- SUM: 数値の合計を計算(例:
=SUM(G2:G21)
) - AVERAGE: 平均値を計算(例:
=AVERAGE(G2:G21)
) - COUNT: データの個数を数える(例:
=COUNT(G2:G21)
) - MAX/MIN: 最大値/最小値を求める(例:
=MAX(G2:G21)
)

これらの集計関数について詳しくはExcel基本の集計関数一覧をご覧ください。
- IF: 条件分岐(例:
=IF(F2>1000,"
高額","通常")
)
IF関数の使い方と応用例はExcel IF関数の基本と活用法で解説しています。
これらの関数は、セルに「=」を入力し、関数名を続けて入力することで使用できます。
データの集計方法
複数の条件でデータを集計するには、SUMIF/SUMIFSやCOUNTIF/COUNTIFSといった関数が便利です。
SUMIF(条件付き合計)の例:
- ある部署の売上合計:
=SUMIF(H2:H21,"
営業部",G2:G21)
- 特定の金額以上の合計:
=SUMIF(G2:G21,">=10000",G2:G21)
詳しい使い方はSUMIF関数ガイドと複数条件のSUMIFSガイドをご参照ください。
COUNTIF(条件付きカウント)の例:
- 特定の商品の販売回数: =COUNTIF(C2:C21,"ノートパソコン")
- 売上金額が一定以上の販売回数:
=COUNTIF(G2:G21,">=10000")
COUNTIF関数の使い方はデータを条件付きでカウントする方法で、複数条件の場合はCOUNTIFS関数ガイドで詳しく解説しています。
簡単な数式を使った分析
関数以外にも、基本的な四則演算を使った分析も可能です。
- 前月比:
=(
今月売上/前月売上)-1
- 達成率:
=
実績/目標
- 構成比:
=
部分/全体
これらの簡単な計算でも、重要な指標が算出できます。四則演算の基本と応用についてはExcelでよく使う計算式のまとめで詳しく解説しています。
よくあるエラーとその意味:#DIV/0! など
Excelで数式を入力したり、データを扱っていると、「#DIV/0!」や「#NAME?」、「#VALUE!」といったエラー値が表示されることがあります。これは計算が正しく行えない状態を示しています。慌てずに原因を確認しましょう。代表的なエラーとその意味は以下の通りです。
- #DIV/0!: 数式内でゼロ(0)による割り算が行われている場合に表示されます。割る数(分母)がゼロまたは空白セルになっていないか確認しましょう。
- #NAME?: 関数名が間違っている、またはExcelが認識できない文字列が数式に含まれている場合に表示されます。関数名のスペルミスがないか、文字列を引用符("")で囲んでいるかなどを確認しましょう。
- #VALUE!: 数式の引数の種類が間違っている場合に表示されます。例えば、数値が必要な箇所に文字列が入力されている場合などです。数式内で参照しているセルのデータ型を確認しましょう。
- #REF!: 数式が参照しているセルが無効(削除されたなど)になっている場合に表示されます。数式の参照先を確認し、修正しましょう。
エラーが表示されたセルを選択すると、左に表示されるエラーアイコン(ひし形に感嘆符)からエラーの原因に関するヒントを得られる場合もあります。
Excelピボットテーブル入門:簡単な使い方と活用例
ここでは、Excelの強力な集計・分析機能であるピボットテーブル(大量のデータから必要な項目だけを抜き出し、集計表を対話的に作成できる機能)について解説します。
ピボットテーブルの基本的な使い方:作成手順
- 分析したいデータ範囲内をクリック
- 「挿入」タブ→「ピボットテーブル」
- データ範囲を確認し、配置場所を選択→「OK」
- 右側に表示される「ピボットテーブルフィールド」から、分析したい項目をドラッグ&ドロップ
- 行エリア:分類の軸(例:カテゴリ、商品名、部署、月、地域)
- 列エリア:比較の軸(例:カテゴリ、商品名、部署、月、地域)
- 値エリア:集計する数値(例:売上、数量)
- フィルターエリア:データを絞り込む条件


詳しい作成手順やポイントはピボットテーブル作成の基本ステップで解説しています。ピボットテーブルについてさらに学びたい方はピボットテーブル関連記事の一覧ページもご参照ください。
ピボットテーブルの活用例:データ集計を効率化
商品別・月別の売上分析:
- 行エリア:商品名
- 列エリア:月
- 値エリア:売上金額(合計)
部署別の平均単価分析:
- 行エリア:部署
- 値エリア:売上金額(合計)、販売数(合計)
- 計算フィールドの追加:平均単価=売上金額÷販売数
ピボットテーブルを使いこなせれば、複雑なデータも視点を変えながら簡単に分析できるようになり、データ活用の幅が大きく広がります。
Excelグラフ作成の基本:初心者向けグラフの種類と使い方
分析結果は、グラフを使って視覚的に表現することで、より分かりやすく伝えることができます。基本的なグラフ作成方法を学びましょう。
代表的なグラフの種類と使い分け:棒・折れ線・円グラフ
分析の目的によって、適切なグラフは異なります:
- 棒グラフ:各項目の量を比較するのに適しています(例:商品別売上比較)
- 折れ線グラフ:時系列データの推移や傾向を見るのに適しています(例:月別アクセス数の推移)。
- 円グラフ:全体に対する各項目の割合を示すのに適しています(例:年代別顧客構成比)。
- 散布図:2つの項目間の関係性や相関を見るのに適しています(例:広告費と売上の関係)。
基本的なグラフの作成方法:Excelで簡単可視化
- グラフにしたいデータ範囲を選択
- 「挿入」タブ→適切なグラフタイプを選択
- 自動的にグラフが作成される


グラフのカスタマイズ:見やすいグラフを作るコツ
作成したグラフは、以下の方法でカスタマイズできます:
- グラフタイトルの追加:グラフをクリック→「グラフデザイン」タブ→「グラフ要素を追加」→「グラフタイトル」
- 凡例の位置変更:「グラフデザイン」タブ→「凡例」→位置を選択
- 軸の設定:軸を右クリック→「軸の書式設定」
- デザインの変更:「グラフデザイン」タブ→「スタイル」から選択
見やすいグラフは、分析結果を効果的に伝える上で重要です。
Excelグラフの基本的な作成方法や各種グラフの特徴について詳しくはExcel初心者のためのグラフ作成ガイドをご覧ください。
目的に合ったグラフを選択し、適切にカスタマイズすることで、分析結果の説得力を高めることができます
【事務職向け】Excelデータ分析の実践例:業務改善に活かす方法
最後に、これまで学んだ知識を活かして、事務職の日常業務で想定される具体的な分析例を見ていきましょう。
経費データの分析例:コスト削減のヒント発見
例えば、『どの部門で経費が多くかかっているのか知りたい』『コスト削減のポイントを見つけたい』といった場合に、部門別・費目別の経費をピボットテーブルで集計し、増減を可視化する分析が役立ちます。
- 部門別・費目別の経費をピボットテーブルで集計
- 前年同月と比較する計算フィールド(ピボットテーブル内で独自の計算式を追加できる機能)を追加
- 増減の大きい項目を棒グラフで可視化
顧客データの分析例:売上アップの糸口を探る
どの地域の顧客がどの商品をよく購入しているか知りたい』『優良顧客を見つけたい』といった課題には、地域別・商品別の購入傾向を分析したり、購入頻度で顧客をフィルタリングする手法が有効です。
- 地域別・商品別の購入傾向をピボットテーブルで分析
- 購入頻度の高い顧客をフィルタリングで抽出
- 顧客層ごとの平均購入額を計算
業務効率の分析例:ボトルネック特定と改善
『作業に時間がかかりすぎている工程はどこか』『担当者によって作業時間に差があるか』などを明らかにしたい場合、タスク完了時間を集計・分析し、ボトルネック(全体の流れを滞らせている原因となっている箇所)を特定することが改善につながります。
- タスク完了までの時間を記録したデータを集計
- 担当者別・タスク種類別の平均所要時間を算出
- ボトルネックとなっている工程を特定
分析結果の読み取り方と次のアクション
- 比較:前月・前年との差、目標との乖離などを確認します。
- 分布:データのばらつきや偏りを把握します。
- 相関:複数の項目間の関連性を探ります。
- 異常値:通常と大きく異なる値に注目し、原因を探ります。
分析結果から「なぜそうなったのか」「今後どうすべきか」を考えることで、データを意思決定や業務改善に活かせます。
これらの例を参考に、ご自身の業務に合わせてExcelでのデータ分析を活用してみてください。
よくある質問
初心者がつまずきやすいポイントとその解決法
Q: 関数の使い方がわからない A: Excelの数式入力ボックスの「fx」ボタンをクリックすると、関数の説明と入力方法が表示されます。
Q: ピボットテーブルが思った通りに集計されない A: 数値データが文字列として認識されていることが多いです。元データの書式を確認してください。
Q: グラフの見た目を変更したい A: グラフを選択した状態で「グラフデザイン」や「書式」タブから様々な設定が可能です。
データ分析時の注意点
- データ入力時のミスが分析結果を大きく歪めることがあります。分析前のデータ確認は重要です。
- 単純な集計だけでなく、「なぜ」その結果になったのかを考えることで、分析の価値が高まります。
- 極端に大きな値や小さな値(外れ値)が全体の傾向を見えにくくしていないか確認しましょう。
まとめ
本記事では、Excelを使った基本的なデータ分析の方法について解説しました。紹介した基本関数やピボットテーブル、グラフ作成などを活用すれば、Excel初心者でも業務効率化や改善に繋がるデータ分析が可能です。ぜひ、あなたのExcelスキルアップに役立ててください。
次のステップへ
基本的なデータ分析に慣れてきたら、以下のような発展的な内容にも挑戦してみてください:
- より高度な関数(XLOOKUP、VLOOKUP, HLOOKUP, INDEX+MATCHなど)の活用
- Power Queryを使ったデータの取得と加工
- Power Pivotを使った大量データの分析
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