Yahoo!ニュース自動化ガイド:Power Automate DesktopとAIで記事要約・キーワード抽出を効率化

はじめに
事務や経理業務において、Webサイトからの情報収集は日常的なタスクです。
市場価格の調査、競合他社の動向確認、業界ニュースの収集など、これらの作業を手動で行うと相当な時間を要します。
さらに、収集した情報をExcelに転記する際のミスや、データの整合性確保といった課題も発生します。
定型的なデータ収集作業に時間を要することで、分析業務や戦略的な判断業務への注力が困難となる状況は、多くの職場で共通の課題です。
この記事では、Power Automate DesktopとAI(ChatGPTやGemini)を活用して、これらの課題を解決する具体的な方法をご紹介します。
プログラミング知識を必要とせず、非エンジニアでも実践可能な手順を通じて、業務効率の向上に貢献します。
Power Automate DesktopとAIの基本概念
Power Automate Desktopとは
Power Automate DesktopはMicrosoftが提供するRPA(Robotic Process Automation)ツールです。
RPAとは、これまで人間が行っていた定型的なパソコン作業を、ソフトウェアロボットが代行する技術です。
このツールの最大の特長は、プログラミング知識がなくても直感的な操作でワークフローを作成できる点です。
ドラッグ&ドロップによる操作や、画面上のボタンクリックを記録する機能により、複雑な作業手順も簡単に自動化できます。
AIとは(ChatGPT/Geminiを想定)
AIは大量のテキストデータを学習し、人間の言語を理解して適切な回答を生成する技術です。
特にChatGPTやGeminiのような生成AIは、文章の要約、キーワード抽出、データの整理において優れた能力を発揮します。
これらのAIサービスは、収集された大量の情報を短時間で分析し、重要なポイントの抽出や、目的に合わせた形式への整形が可能です
なぜこの2つを組み合わせるのか
Power Automate DesktopとAIの組み合わせは、それぞれの強みを活かした効率的な役割分担を実現します。
Power Automate Desktopは定型的な「収集」作業を得意とします。
同じWebページから定期的にデータを取得する、特定の形式でファイルを保存するといった反復作業を、正確かつ高速で実行できます。
一方、AIは収集されたデータの「理解」と「加工」を得意とします。
大量のテキストから重要な情報を抽出し、目的に応じた形式に整理することで、人間の判断をサポートします。
この組み合わせにより、情報収集から活用可能な形での整理まで、一連のプロセスの効率化が期待できます。
Webサイトからの情報収集・自動整形の具体的なステップ
ステップ1:Power Automate Desktopのフローを準備する
提供するPADスクリプトの利用方法
本記事では、Yahoo!ニュースからの情報収集に特化したPower Automate Desktopのスクリプトを提供しています。
このスクリプトをクリップボード経由でペーストすることで、すぐに使用を開始できます。
初期設定では「主要ニュース」のRSSフィードが設定されています。
必要に応じて、Yahoo!ニュースのRSSフィード一覧から目的のカテゴリのURLを確認し、フロー最初の「変数の設定」アクションでURLを変更することで、経済、政治、スポーツなど特定分野のニュースを対象とすることも可能です。
スクリプトをインポートした後は、保存先フォルダの指定など、基本的な設定変更のみで運用を開始できます。
Webブラウザの起動とページ表示
スクリプトを実行すると、自動的にWebブラウザが起動し、指定されたRSSフィードのページを表示します。
ブラウザは最小化設定で起動されるため、実行中の画面での動作確認はできませんが、処理はバックグラウンドで進行します。
データ抽出の仕組み
スクリプト内では「Webページからデータを抽出する」アクションを使用して、ニュース記事の情報を自動収集します。抽出される情報は以下の通りです:
- 記事タイトル
- 記事URL
- 記事本文
これらの情報は構造化された形で取得され、後続の処理で活用しやすい形式で保存されます。
取得したデータの保存
抽出されたデータは2つのファイルに分けて保存されます:
- Excelファイル(ニュース一覧.xlsx):記事タイトル、URL、概要情報を表形式で整理
- テキストファイル(記事本文.txt):すべての記事本文を1つのファイルにまとめて格納
テキストファイルでは、各記事の冒頭に「---記事番号:記事タイトル:記事開始---」という明確な区切りが挿入されるため、AIによる分析時に個別の記事を正確に識別できます。
ステップ2:AIサービスでの情報整形・分析(手動連携)
PADで作成したファイルの準備
ステップ1で作成されたExcelファイルとテキストファイルを確認します。
Excelファイルには記事の一覧情報が、テキストファイルには詳細な記事内容がそれぞれ格納されています。
AIサービスへのデータ入力
WebブラウザでChatGPTまたはGeminiのWebインターフェースを開きます。PADで作成されたテキストファイルを、チャットの入力欄に直接ドラッグ&ドロップ、または添付ボタンからアップロードします。
注意点:AIサービスには1回のアップロードで処理できるファイルサイズやテキスト量に制限があります。大量のテキストを扱う場合は、ファイルを複数に分割するか、手動でのコピー&ペーストが必要になる場合があります。
プロンプトの設計
ファイルアップロード後、適切な指示(プロンプト)をAIに与えることで、期待する形式での分析結果を得られます。
ChatGPT向けプロンプト例:
添付されたテキストファイルには複数のニュース記事が含まれています。
各記事は---記事番号:記事タイトル:記事開始---という形式で始まっています。
それぞれの記事について、要約とキーワードを抽出してください。要約は200字以内、キーワードは5つ以内でコンマ区切りにしてください。抽出結果は、元のテキストの各記事に対応する形でまとめて提示してください。
Gemini向けプロンプト例:
添付されたテキストファイルに含まれる複数のニュース記事を分析し、それぞれを要約して、記事の核心を示すキーワードを抽出してください。
各記事は---記事番号:記事タイトル:記事開始---という明確な区切りで始まっています。
要約とキーワードに加えて、記事から重要な数値や固有名詞(人名、組織名など)があればリストアップしてください。
ChatGPTは汎用的なテキスト生成に優れているため、シンプルで明確な指示が効果的です。
Geminiは情報検索・分析能力に長けているため、具体的なデータ抽出を含む詳細な分析を期待できます。
AIからの出力の活用
AIから提示される要約やキーワードは、記事内容の迅速な把握に非常に有効です。
ただし、AIは時として事実と異なる情報を生成するハルシネーション(幻覚)という現象が発生する可能性があるため、重要な判断については必ず元の記事本文も確認することを推奨します。
このプロセスにより、Power Automate Desktopによる定型的な情報収集とAIによる高度な分析・整形が連携し、効率的なワークフローが実現されます。
実践的なメリットと応用例
ニュース記事の自動収集、要約、キーワード抽出
提供するPower Automate Desktopスクリプトを活用することで、Yahoo!ニュースのRSSフィードから最新ニュース記事を効率的に収集できます。
Yahoo!ニュースに特化した設計により、安定したデータ取得に貢献します。
具体的な活用例として以下が挙げられます:
経理部門での活用例:
- 経済ニュースの定期収集により、為替変動や金利動向を把握
- 収集した記事をAIで要約し、重要な経済指標を抽出
- 月次レポート作成時の情報源として活用
総務部門での活用例:
- 労働法改正や税制変更に関するニュースを自動収集
- 法改正の内容をAIで要約し、社内への影響度を評価
- コンプライアンス対応の準備資料として活用
営業企画部門での活用例:
- 業界動向や競合他社の動きを定期的に収集
- 市場トレンドをAIで分析し、営業戦略の検討材料として活用
- 顧客向け提案資料の情報収集として活用
これらの活用により、従来手作業で行っていた情報収集と一次加工の時間を大幅に削減し、より付加価値の高い業務に時間を集中できるようになります。
時間効率化の効果
従来の手作業による情報収集では、複数のWebページを開いて記事を読み、重要な情報をExcelに転記する作業に相当な時間を要していました。
この自動化システムを導入することで、データ収集から整理までの一連の作業時間の短縮が見込めます。
削減された時間は、収集した情報の深掘り分析や、戦略的な判断業務に活用でき、業務の質的向上に寄与します。
注意点と考慮事項
Webサイトの利用規約と倫理的配慮
Webサイトからの自動情報収集を行う際は、対象サイトの利用規約(Terms of Service)を必ず確認してください。
Yahoo!ニュースの場合、RSSフィードは公開されている機能であり、一般的な利用において明確な禁止事項はありません。ただし、サーバーに過度な負荷をかけないよう、適切な配慮が必要です。提供するスクリプトでは、各アクセス間に3秒の遅延を設定しており、サーバー負荷の軽減に配慮しています。
収集した情報を個人または社内の非公開用途に限り利用する場合、一般的な著作権法や倫理的問題は生じにくいと考えられます。
ただし、これらの情報を第三者へ公開する、または商用目的で利用する際は、著作権者の許可を得るなど、法的な側面を十分に考慮する必要があります。
また、AIサービスに情報をアップロードする際の情報セキュリティについても十分な配慮が必要です。
データ精度の限界
AIの出力は常に完璧であるとは限りません。詳細についてはハルシネーション(幻覚)をご参照ください。
最終的な業務利用に際しては、人間による確認作業を実施し、必要に応じて修正してください。
ツールのアップデートと変化
Power Automate DesktopやAIサービスは、機能のアップデートや仕様変更が頻繁に行われます。
Yahoo!ニュースのサイト構造やRSSフィードの仕様も将来的に変更される可能性があります。
作成したフローが突然動作しなくなる場合や、AIの応答形式が変わる場合があるため、継続的な学習とメンテナンスが必要であることを理解しておくことが重要です。
定期的な動作確認と、必要に応じたスクリプトの調整を実施してください。
まとめ
Power Automate DesktopとAIの組み合わせは、非エンジニアでもWeb情報収集と整形を自動化し、業務を大幅に効率化する強力な手段です。
手作業による時間消費の削減、ヒューマンエラーの防止、そして新たなデータ活用の可能性を提示します。
まずは提供されたスクリプトを試用し、小規模なタスクから適用することを推奨します。
本記事で紹介した概念と応用例を参考に、自身の業務への適用方法を検討してください。
定型的な情報収集作業を効率化することで、より創造的で戦略的な業務への集中を促進し、業務の質的向上に貢献します。
関連記事:使用しているPower Automate Desktopアクション
本記事で提供するスクリプトでは、以下のPower Automate Desktopアクションを使用しています。各アクションの詳細な使用方法については、リンク先をご参照ください。
基本設定・制御系
- 変数を増やす:記事番号の管理に使用
- If:定型的に処理できない特集記事が混ざることがあるため、URLに「articles」が含まれるかどうかで処理対象を制御
- Loop:記事一覧の反復処理に使用
- 待機:サーバー負荷軽減のため3秒遅延に使用
- 例外処理:エラー発生時の処理継続とページの終端制御に使用
- コメント:スクリプトの可読性向上に使用
ファイル・フォルダ操作系
- フォルダーの選択ダイアログを表示:保存先フォルダの指定に使用
- 一時フォルダーを取得:作業用ファイル(RSSフィード)の保存場所として使用
- テキストをファイルに書き込み:記事本文ファイルの作成に使用
データ処理系
- XMLファイルから読み取り:RSSフィードの解析に使用
- テキストを解析:URLに「articles」が含まれるかを調べるために使用
- テキストを置換:URLが初期状態では記事へのコメント参照用なため、「/comments」を削除して記事本体のURLに加工
- テキストに行を追加:記事本文を一つのテキストに統合するために利用
Excel操作系
- Excelの起動:ニュース一覧ファイルの作成開始時に使用
- Excelに書き込み:記事タイトルやURLの記録に使用
- Excelを閉じる:ファイル保存と処理完了時に使用