【AI用語】自然言語処理(NLP)

導入
現代の事務・経理業務では、契約書、請求書、顧客からのメール、会議記録など、大量の文書やテキストデータを日常的に処理しています。これらの情報を効率的に処理し、活用することは、業務の生産性向上と正確性の確保において重要な課題となっています。
自然言語処理(Natural language processing)は、人間が日常的に使用する言葉をコンピューターが理解し、処理する技術として、これらの課題解決に新たな可能性を提供します。従来は人手に頼っていた文書の読み取りや情報抽出、顧客対応などの業務において、AIが人間の言葉を理解し、支援することで、より具体的な業務の効率化と品質向上が見込まれます。
定義
自然言語処理(NLP)とは、人間が日常的に使用する言葉(自然言語)をコンピューターが理解し、処理する技術です。
具体的には、文書やメール、音声データなどに含まれる文字情報や話し言葉から、意味のある情報を抽出し、分析・活用する仕組みを指します。
例えば、請求書に記載された金額や日付を自動的に読み取り、会計システムへの入力を効率化したり、顧客からの問い合わせ内容を理解して適切な回答を自動提示したりする技術が、自然言語処理の代表的な応用例です。
従来のシステムでは、あらかじめ決められた形式やキーワードでしか情報を処理できませんでしたが、自然言語処理技術により、人間が普段使っている自然な表現や文章からも情報を抽出し、活用することが可能になります。
またChatGPTやGeminiのような対話型AI/文章生成AIが、まるで人間と話しているかのように自然な文章を生成できるのは、この自然言語処理が活用されているためです。
具体的な例
事務・経理業務において、自然言語処理技術は以下のような場面で活用されています。
社内外文書からの情報抽出
契約書、請求書、報告書などの文書から、必要な日付、金額、取引先名などの情報を自動的に識別し、抽出します。これにより、手作業によるデータ入力や確認の手間を削減できます。
例えば、請求書のPDFファイルから「請求日」「支払期日」「請求金額」「取引先名」などの項目を自動的に読み取り、会計システムに直接入力する作業が可能になります。文書の形式やレイアウトが異なっていても、技術の進歩により高い精度で情報を抽出できるようになっています。
顧客対応の効率化
顧客からのメールやチャットでの問い合わせ内容をAIが理解し、FAQからの自動応答や、適切な担当者への振り分けを支援します。これにより、顧客対応の迅速化と担当者の負担軽減に繋がります。
具体的には、「請求書の再発行をお願いします」「支払い方法を変更したい」といった問い合わせ内容を自動的に分類し、経理部門や営業部門など適切な担当者に振り分けることができます。また、よくある質問については、自動応答により即座に回答を提供することも可能です。
議事録・報告書の自動要約
会議の音声データや発言内容をテキスト化し、その中から重要なポイントや決定事項を自動で抽出し、要約された議事録や報告書を作成します。
長時間の会議内容から「決定事項」「次回までの宿題」「重要な数値」などの情報を抽出し、簡潔な議事録として整理することで、会議後の文書作成時間を大幅に短縮できます。また、複数の会議資料や議事録から共通のテーマや課題を抽出し、定期報告書の作成を支援することも可能です。
市場動向・顧客の声の分析
大量のニュース記事、SNSの投稿、アンケート自由記述欄などから、特定のキーワードや感情(ポジティブ、ネガティブなど)を分析し、市場のトレンドや顧客のニーズを把握します。
例えば、自社製品やサービスに関する顧客の声を収集し、満足度や改善点を定量的に把握することができます。また、競合他社や業界全体の動向を把握し、経営判断の材料として活用することも可能です。従来は人手で行っていた大量のテキストデータの分析作業を自動化し、客観的かつ網羅的な分析結果を得ることが可能になります。