Dify入門:無料ですぐ試せるチャットボット作成手順【効率化の新たな可能性】

業務効率化のヒント:Difyを活用したAIチャットボット導入の第一歩

業務の中で「同じ質問に何度も答えている」「情報を探すのに時間がかかる」という課題を抱えているでしょうか。AIチャットボットの導入は、こうした反復的な業務を効率化する有効な手段となります。

本記事では、AIアプリケーション開発プラットフォーム「Dify」を用いて、無料かつノーコードでチャットボットを作成する具体的な手順を解説します。技術的な専門知識がなくても、業務改善の第一歩として実践できる内容となっています。

動画版

Difyとは:なぜ今、業務にDifyを使うのか

Difyとは何か

Difyは、ノーコードでAIアプリケーションを構築できるプラットフォームです。特筆すべき点は、以下の3つです。

  1. プログラミング知識が不要
  2. 企業内の既存資料(PDF、Excelなど)を知識ベースとして活用可能
  3. 無料のCommunity版で十分な検証が実施できる

解決できる業務課題

  • 社内規程やマニュアルへの問い合わせ対応の自動化
  • 顧客サポート業務における初期対応の効率化
  • 新入社員向けのFAQ対応の省力化

無料プランでも、組織内での試験運用や効果検証に十分な機能が提供されています。初期投資を抑えながら、AI導入の実効性を確認できる点が実務上の利点となります。

ただし、無料プランには以下の留意点があります。

  • 利用回数の制限:質問回数やメッセージ数に上限が設定されています。大規模な運用には有料プランへの移行が必要です。
  • データの取り扱い:公開されている資料(厚生労働省のQ&Aや一般的なマニュアルなど)を用いた検証に留め、社内の機密情報や個人情報を含むデータは使用しないことを推奨します。

チャットボット作成手順

チャットボット作成前の準備:アカウント登録と最初の設定

必要なもの

  • メールアドレス
  • インターネット接続環境
  • ブラウザ(Chrome、Firefox、Safari等)

アカウント登録手順

  1. Dify公式サイト(https://dify.ai/)にアクセス
  2. メールアドレス、またはGoogleアカウント/GitHubアカウントで登録

アカウントは手軽なGoogleアカウントで検証するのがおすすめです。そして有料プランで企業用に利用する段階で、組織のメールアドレスに切り替えるのがよいでしょう。

登録後、メニューから「スタジオ」を選択すると、アプリケーション作成画面に遷移します。

ステップ1:チャットボットアプリケーションの新規作成

ダッシュボードから実際にチャットボットを作成します。

作成手順

  1. 「スタジオ」画面で「最初から作成」をクリック
  2. アプリケーションタイプとして「チャットボット」を選択
  3. アプリ名を入力(例:「テレワーク制度Q&Aボット」)
  4. 「作成」をクリック

作成後、アプリケーションの編集画面に遷移します。初期状態では、基本的なAIモデル(Gemini 2.5Flash や GPT-4.0等)がデフォルトで設定されています。最初の段階ではモデルの変更は不要で、そのまま次のステップに進むことを推奨します。

ステップ2:PDF知識ベースのアップロードと設定

Difyの強みは、既存の文書をそのままAIの知識として取り込める点にあります。この仕組みは「RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)」と呼ばれ、AIが回答する際に、アップロードした文書から関連する情報を検索し、その内容に基づいて応答を生成します。

これにより、一般的なAIの知識だけでなく、組織固有の情報や最新の資料を反映した回答が可能になります。

ここでは、厚生労働省が公開しているテレワークに関するQ&A文書を例に、知識ベースの構築方法を解説します。

使用する資料

厚生労働省「テレワークに関するQ&A」
URL: https://jsite.mhlw.go.jp/kumamoto-roudoukyoku/content/contents/001005605.pdf

このPDFをダウンロードしておきます。

知識ベースの作成手順

  1. メニューから「ナレッジ」を選択
  2. 「ナレッジベースを作成」をクリック
  3. ファイルアップロード欄にダウンロードしたPDFをドラッグ&ドロップして保存

ファイルが大きい場合は処理に時間を要します。

続いてチャンクの設定が表示されますが、初期設定のまま進めます。

PDFも利用可能ですが、そのままでは実用性が低いことが多いです。

とりあえず初めて見る場合は、ダウンロードしたPDFをそのまま利用してもよいですが、

実用性を上げたい場合は不要な部分を削除し、QAを何らかの記号で区切るような加工が必要になります。

次のようなプロンプトで生成AI(ChatGPTやGemini)に加工を依頼し、その結果を編集するのも有効です。

添付ファイルをDifyの知識ベースとして使いやすい形式に加工してください。

テレワーク制度についての知識を回答するチャットボットに利用します。

テキストファイルとして出力してください。

ナレッジの登録が終わったら作成中のチャットボットに戻り「コンテキスト」の「追加」をクリックします。

「参照する知識を選択」が表示されるので、追加したナレッジを選択し、「追加」をクリックします。(このナレッジはPDFを加工したものです)

知識ベースを選択するダイアログ。作成済みのナレッジ(テレワークナレッジ.txtなど)が選択され、「追加」ボタンでチャットボットに適用される様子。

ステップ3:AIの振る舞いを決定するプロンプトを指定

知識ベースを効果的に活用するには、AIの振る舞いを明確に定義する必要があります。プロンプトとは、AIに対する指示文のことです。

プロンプトの役割

  • AIが回答する際の立場や態度を規定
  • 情報源の範囲を限定し、不正確な推測を防止
  • 回答の品質と一貫性を担保

プロンプト例

プロンプト欄に、以下のプロンプトを入力します。

あなたは、提供された厚生労働省のQ&A文書の内容に基づき回答を行う、テレワーク制度に関する専門の案内係である。回答は提供された文書内の情報に厳密に基づいて行ってください。

文書では回答できない場合は、一般論であることを最初に強調してから回答を行ってください。

このプロンプトには、回答の根拠を知識ベースに優先し、それから外れる場合はそれを示した上で回答する意図があります。

プロンプト設定後、「公開する」で保存します。

※一般公開されそうなボタン名ですが、アクセスできるのはメールなどでURLを教えている人だけです。

ステップ4:作成したチャットボットのテストと精度改善

作成したチャットボットが期待通りに機能するか、実際に質問を投げかけて検証します。

テスト方法

アプリ編集画面の右側に「デバッグとプレビュー」欄が表示されています。

チャットボットの動作を確認できます。

具体的なテスト質問例

  • 「自宅で仕事をする場合の通信費の費用負担は?」
  • 「時間外労働の注意点は?」
  • 「テレワーク中の労働時間管理はどうすればよいか?」

精度改善のアプローチ

回答が不正確、意図通りでない場合、以下のような調整を行います。

  1. プロンプトの再設定:回答の制約条件をより明確に記述
  2. 知識ベースの見直し:区切りが不適切な場合、回答が途中で途切れることがあります。分割設定を変更すると改善することがあります。
  3. テストの反復:複数の質問パターンで動作を確認

改善は段階的に行い、各変更の効果を個別に検証することが効率的です。

改善は生成AI(ChatGPTやGemini)のサポートを受けるのも有効です。その際、プロンプトには以下を含めます。

  • ナレッジのファイルを添付
  • チャットボットへの質問
  • その質問に期待する回答
  • 実際に返ってきた回答

Difyで実現する業務改善の次の可能性

チャットボットを作成した後、実際の業務環境で活用する方法を検討します。

具体的な利用シーン

  1. 社内イントラへの埋め込み
    Difyは埋め込み用のHTMLコードを自動生成します。これをコピーして社内ポータルサイトに貼り付けるだけで、従業員がアクセス可能になります。
  2. Slack連携
    API経由でSlackと連携し、チャンネル内で直接チャットボットに質問できる環境を構築可能です。
  3. 顧客サポートへの応用
    製品マニュアルやFAQを知識ベースにすることで、顧客からの初期問い合わせに自動対応できます。

共有方法

アプリ編集画面の「公開する」から、以下の共有方法が選択できます。

  • 公開URL:特定のリンクでアクセス可能にする
  • 埋め込みコード:ウェブサイトに組み込む(社内イントラやウェブにHTML組み込み可能)
  • API:Slackなどの外部システムと連携する(※この方式は技術知識が必要です

無料プランでもこれらの機能は利用可能で、「公開する」のメニューから選択します。

Difyによる効率化:始めるべき理由と今後の展望

Difyは、ノーコードで業務改善の可能性を無料で検証できるプラットフォームです。技術的なハードルを下げながら、AI活用の実効性を組織内で確認できる点が最大の利点となります。

本記事で示した基本的な手順を踏まえ「APIやHTML埋め込みによる様々な方式による共有」や「業務フローに組み込まれた自動応答システム」のような拡張が可能です。

技術的な専門知識がなくても、段階的に機能を拡張していくことが可能です。まずは小規模な試験運用から始め、効果を確認しながら適用範囲を広げていく方法が現実的なアプローチとなります。

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