【AI用語】深層学習(DL:Deep Learning)

2025年7月15日

深層学習の概念を表現した、落ち着いた雰囲気のオフィス環境のイラスト。

深層学習(DL:Deep Learning)は、AI(人工知能:Artificial Intelligence)技術の中でも特に注目されている分野です。従来の機械学習(ML:Machine Learning)では対処が困難だった複雑なデータ処理を可能にし、特に画像、音声、自然言語といった非構造化データの高度な処理を実現します。

この技術により、AIが人間のように「見て」「聞いて」「理解する」能力を持つことが可能になり、ビジネスにおける課題解決や価値創出の新たな手段として活用されています。

定義

深層学習(DL:Deep Learning)とは、人間の脳の神経回路を模した「ニューラルネットワーク」を多層的に構築し、大量のデータから複雑な階層的な特徴を自動的に学習する技術です。機械学習(ML:Machine Learning)の手法の一つであり、特に多くの「層」(階層)を持つネットワークを用いることで、より高度なデータ表現とパターン認識を実現します。

階層的な特徴とは、データの中に存在する様々なレベルの重要性を持つ情報のことです。例えば、写真の画像を認識する際、最初の層では「線」や「点」のような単純な特徴を捉え、次の層ではそれらを組み合わせて「円」や「角」のような少し複雑な形を認識し、さらに次の層ではそれらの形を組み合わせて「目」や「鼻」といった具体的な部品、最終的には「犬」という全体の概念を認識するように、段階的に情報を深く理解していく仕組みです。

深い層とは、深層学習で用いられる「ニューラルネットワーク」において、情報の処理を行う複数の「層」が積み重なってできた構造を指します。この「層」の数が多く、深く積み重なっているものを「深い層」を持つネットワークと呼びます。層が深いほど、AIはより複雑で抽象的なデータの特徴を学習し、高度な判断ができるようになります。

従来の機械学習(ML:Machine Learning)が人間による「特徴量設計」を必要とする場面があったのに対し、深層学習(DL)はデータそのものから特徴量を自動的に抽出し、より深いレベルで学習を進めることができます。これにより、パターン認識や予測の精度が飛躍的に向上します。

特徴量とは、AI(人工知能)がデータの中から学習するために着目する情報のことです。例えば、写真から犬を識別する場合、「耳の形」「鼻の色」「尻尾の長さ」などが特徴量となりえます。人間がデータを見て「これは重要だ」と判断し、AI(人工知能)に教えるのが「特徴量設計」です。深層学習(DL)では、この特徴量自体もAI(人工知能)が自動で見つけ出す点が特徴です。

構造化データと非構造化データ

構造化データは、データベースや表計算ソフトのように、あらかじめ決められた形式(例:行と列)で整理され、決まった項目に分類されたデータです。例えば、氏名、住所、電話番号がそれぞれ決まった欄に入力されている顧客リストなどがこれに当たります。従来の機械学習(ML)は、主にこの構造化データの分析を得意としていました。

非構造化データは、定められた形式を持たず、自由な形式で存在するデータです。例えば、画像ファイル、音声データ、メールの本文、SNSの投稿、契約書のフリーテキストなどがこれに該当します。深層学習(DL)は、このような非構造化データから意味のある情報を抽出し、分析する能力に優れています。

具体的な例

事務業務における例

手書き書類の高度な文字認識と分類 歪みや多様な筆跡を持つ手書きの領収書や伝票から、従来のOCR(光学的文字認識:Optical Character Recognition)では困難だった高精度な文字認識と項目ごとの自動分類が可能になります。これは非構造化データである画像から情報を抽出する例です。

契約書における特定条項やリスク情報の自動抽出 大量の契約書の中から、法的リスクをはらむ特定の条項や、支払い条件などの重要情報を文脈を理解した上で自動的に特定・抽出します。これも非構造化データであるテキストを分析する例です。

音声データ(会議など)からの文字起こしや発言者の分別 会議の録音データから、深層学習を用いた音声認識により発言内容を文字に起こしたり、誰がいつ話したかを自動的に区別したりすることが可能になり、議事録作成などの負担を軽減します。

経理業務における例

異常取引の高度な検出とパターン分析 膨大な取引データの中から、人間では見逃しやすい複雑な組み合わせや時系列的な異常パターンを学習し、不正会計の兆候や誤った計上を早期に検知します。これは主に構造化データですが、深層学習(DL)によりより深いパターン認識が可能です。

詳細な財務データからの市場トレンド予測 過去の財務データだけでなく、企業のニュース記事や市場動向を示す非構造化データも組み合わせて分析し、より多角的な視点から将来の売上や株価の変動を予測します。構造化データと非構造化データの両方を活用する例です。

深層学習のメリットと注意点

メリット

非構造化データの活用と分析能力の向上 画像、音声、自由記述のテキストなど、これまでは分析が難しかった多様な非構造化データから、自動で有益な情報を引き出し、業務に活用する新たな可能性が広がります。

高精度な自動化と意思決定支援 複雑な判断やパターン認識を伴う業務においても、高精度な自動化を実現し、迅速かつ正確な意思決定を支援します。

新たな課題解決への貢献 従来の機械学習(ML)では解決が困難だった問題に対し、深層学習(DL)の活用により、より高度な分析や予測が可能となり、ビジネスにおける新たな価値創出に繋がります。

注意点

大量かつ高品質なデータへの依存 深層学習(DL)モデルの性能は、学習に使用するデータの量と質に大きく依存します。特に非構造化データを扱う場合、適切なデータ収集と前処理が重要です。

モデルの「ブラックボックス性」 深層学習(DL)モデルがどのように推論を行い、結果に至ったかのプロセスが人間には理解しにくい場合があります。これにより、結果の解釈や問題発生時の原因特定が困難になることがあります。

計算リソースの要求 複雑なモデルのトレーニングには、高性能な計算能力と時間が必要です。

まとめ

深層学習(DL:Deep Learning)は、従来の機械学習(ML:Machine Learning)の限界を超え、特に画像、音声、自然言語といった複雑な非構造化データから高精度な学習と判断を可能にするAI(人工知能)技術です。

この技術を理解し、業務に適用することで、非構造化データの活用、より高度な自動化、そしてビジネスにおける新たな課題解決といった、質と効率の両面での向上が期待されます。

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