【AI用語】教師あり学習、教師なし学習、強化学習

AIがどのように『学習』し、私たちの業務を支援しているのかを理解するために、3つの主要な学習アプローチを解説します。教師あり学習、教師なし学習、強化学習は、それぞれ異なるデータの種類や解決したい課題に応じて使い分けられており、事務職や経理担当者の業務効率化に活用され、新たな可能性を創出します。
教師あり学習:正解データから学ぶAI
定義
教師あり学習とは、AIが「正解」が与えられたデータからパターンを学習する手法です。過去のデータとそれに対応する正しい答えを基に、新しいデータに対して予測や分類を行います。例えば、「このメールはスパム」「この請求書は承認済み」といった正解ラベルが付いたデータから学習します。
具体的な例
事務業務における活用例
過去のメールの「迷惑メール」か「そうでないか」という分類データに基づき、新しいメールを自動で振り分けるシステムが構築できます。また、顧客からの問い合わせ履歴とその回答データから、よくある質問に対する自動応答を作成することも可能です。
経理業務における活用例
過去の経費申請データ(領収書の種類、金額、承認・却下の結果)を学習し、新たな申請が承認される可能性を予測するシステムが実現できます。さらに、取引データと、それが「正常な取引」か「不正な取引」かの情報を用いて、不審な取引を検知するシステムも構築可能です。
利用者への影響/メリット/注意点
メリットとして、明確な予測や分類が可能になり、定型的な判断業務の効率化が期待できます。
注意点として、正確な「正解データ」を大量に用意する必要があり、データの質が結果に直結します。
教師なし学習:データに隠されたパターンを見つけ出すAI
定義
教師なし学習とは、AIが「正解」が与えられていないデータの中から、自身で共通のパターンや構造、類似性などを見つけ出す手法です。データを分類したり、異常を検知したりする際に用いられます。
具体的な例
事務業務における活用例
大量の顧客データの中から、購買履歴や行動パターンが似ている顧客グループを自動で特定し、セグメント分けに役立てることができます。また、社内文書や過去の会議録から関連性の高いキーワードを抽出し、情報の整理や検索効率の向上に利用することも可能です。
経理業務における活用例
大量の取引データの中から、通常のパターンから外れる異常な取引(不正の可能性)を自動で検知できます。経費の項目や使用傾向から、これまでに意識されていなかったコスト削減のパターンを発見することも期待できます。
利用者への影響/メリット/注意点
メリットとして、未知のデータから新たな発見や洞察を得る可能性があり、業務改善のヒントを見つけやすくなります。
注意点として、AIが見つけ出したパターンが常に業務に有用であるとは限らず、専門家による解釈や検証が必要になる場合があります。
強化学習:試行錯誤を通じて最適な行動を学ぶAI
定義
強化学習とは、AIが特定の目標を達成するために、試行錯誤を繰り返しながら最適な行動戦略を自律的に学習する手法です。行動の結果として得られる「報酬」を最大化するように学習を進めます。
具体的な例
事務業務における活用例
タスク管理システムにおいて、過去の作業データや完了状況から、特定の業務における最適なリソース配分やスケジュールを提案することができます。問い合わせ対応チャットボットが、ユーザーの質問に対する回答の精度を、ユーザーからのフィードバック(解決したか否か)に基づいて向上させることも可能です。
経理業務における活用例
在庫管理システムにおいて、需要予測とコストを考慮し、自動で最適な発注量を決定する仕組みが実現できます。ポートフォリオ管理において、市場の変動に対応して最適な資産配分を自動調整することも期待できます。
利用者への影響/メリット/注意点
メリットとして、複雑な状況下での最適な意思決定や自動化を支援し、動的な業務プロセスを改善する可能性を秘めています。
注意点として、適切な報酬設定が難しく、学習に時間がかかる場合があります。また、想定外の状況に対応できないリスクも考慮する必要があります。
3つの学習手法の比較
| 学習手法 | 目的 | 必要なデータの種類 | 典型的な用途 |
|---|---|---|---|
| 教師あり学習 | 予測・分類 | 正解ラベル付きのデータ | スパムメール分類、顧客の購買予測、画像認識 |
| 教師なし学習 | パターン発見・構造抽出 | 正解ラベルなしのデータ | 顧客セグメンテーション、異常検知、データ圧縮 |
| 強化学習 | 最適な行動戦略の獲得 | 環境と報酬、行動履歴データ | 自動運転、ゲームAI、ロボット制御 |
まとめ
AIの学習アプローチである教師あり学習、教師なし学習、強化学習は、それぞれ異なる特性を持ち、多様な業務課題の解決に利用されています。教師あり学習は明確な予測や分類に、教師なし学習はデータからの新たな発見に、強化学習は複雑な意思決定の最適化に適しています。これらの手法を理解することは、自社の業務にAIをどのように導入し、活用できるかを検討する上で重要な基礎知識となり、業務効率化や新たな可能性を探る一助となります。