②AIマネジメント:AIを動かす「言葉(プロンプト)」を育てる。-AIは「最強の新人である」-自分一人を「最強のチーム」に変えるAI仕事術
まだ「はじめに」を読んでいない方は、先にこちらをお読みいただくと、より理解が深まります。
※移動中や作業中の方、本記事のエッセンスを凝縮したこちらの要約動画(朗読版)をどうぞ。声優・井上喜久子さんの声を元にしたAI音声(桜乃そら)を使用しており、ラジオのように聞きやすく、優しい声で聞き流せます。
プロンプトは「呪文」ではなく「指示メモ」である
プロンプトへの誤解を解く
「プロンプト」という言葉を聞いて、あなたはどんなイメージを持たれるでしょうか。
「なんだか難しそう」「プログラミングみたいなもの?」「特別なスキルがないと使えなさそう」——そんな印象を抱く方は少なくありません。ネット上には「最強のプロンプト集」「これだけで劇的に変わる魔法の呪文」といった記事があふれ、まるでAIを動かすには秘密の呪文を唱えなければならないかのような雰囲気が漂っています。
しかし、それは大きな誤解です。
プロンプトの正体は、驚くほどシンプルなものです。一言でいえば、「部下への指示メモ」 です。あるいは、「仕事の引き継ぎ書」「依頼のメール」と言い換えてもいいでしょう。
想像してみてください。あなたが新人に仕事を頼むとき、どうされるでしょうか。おそらく、こんなふうに伝えるはずです。
「来週の会議用に、先月の売上データをまとめた資料を作ってほしい。A4で2枚以内、グラフを入れて、部長にも見せるからフォーマルな感じでお願い」
これが、まさにプロンプトそのものです。何も特別なことはありません。日本語で、やってほしいことを、具体的に伝える。ただそれだけのことなのです。
AIは、あなたの言葉を理解します。難解なコマンドを覚える必要はありません。英語で書く必要もありません。普段、同僚や部下に仕事を頼むのと同じように、自然な言葉で伝えればいいのです。
なぜ「育てる」という発想が重要なのか
ここで、もう一つ大切なことをお伝えしたいと思います。
多くの方がAIを使い始めるとき、「一発で完璧な答えを引き出さなければならない」と思い込んでいらっしゃいます。だから、AIの返答が期待どおりでないと、「やっぱりAIは使えない」「自分にはセンスがない」と諦めてしまうのです。
しかし、考えてみてください。あなたが新人に仕事を頼んだとき、一発で完璧なアウトプットが返ってくることがどれだけあるでしょうか。
「もう少し詳しく書いてほしい」「ここはグラフじゃなくて表のほうがいいかな」「この部分は削って、代わりに競合の情報を入れて」——そんなやりとりを経て、ようやく求めていた成果物が完成するのが普通です。
AIとのコミュニケーションも、まったく同じなのです。
プロンプトは「書く」ものではなく「育てる」ものです。
最初の指示で100点を目指す必要はありません。60点でも、50点でもいいのです。まずは書いてみて、AIの返答を見て、「ここが違うな」と思ったら修正する。そのサイクルを2回、3回と繰り返すうちに、プロンプトは磨かれ、あなたが本当に欲しかった答えに近づいていきます。
これは、植物を育てることに似ています。種を蒔いたら、水をやり、日光に当て、ときには肥料を与えます。一度水をやったら終わりではなく、様子を見ながら手入れを続けることで、立派な花が咲きます。プロンプトも同じです。最初に書いた指示は「種」にすぎません。AIの反応を見ながら「水やり(修正)」を繰り返すことで、プロンプトは成長し、実りある成果をもたらすようになるのです。
この発想を持つだけで、AIとの付き合い方は劇的に変わります。
「一発で完璧な呪文を唱えなければ」というプレッシャーから解放され、「まずは試してみよう」「ダメなら直せばいい」という気軽さでAIと向き合えるようになります。失敗を恐れる必要はありません。むしろ、最初の指示がうまくいかないのは当たり前であり、そこからの改善こそが腕の見せどころなのです。
「対話」というキーワード
もう一つ、覚えておいていただきたい言葉があります。それは 「対話」 です。
AIとのやりとりは、一方通行の命令ではありません。あなたが指示を出し、AIが応え、その応えを見てあなたがフィードバックする。そのキャッチボールを繰り返すことで、お互いの理解が深まり、アウトプットの精度が上がっていきます。
これは、システム開発の世界で「アジャイル」と呼ばれる考え方に近いものです。従来のシステム開発では、最初にすべての要件を完璧に決めてから作り始める「ウォーターフォール」という手法が主流でした。しかし、現代では、小さく作って試し、フィードバックを得て改善するサイクルを高速で回す「アジャイル」が主流になっています。
AIへの指示も、まさにアジャイル的なアプローチが有効です。完璧な要件定義を最初から作ろうとするのではなく、まずはざっくり伝えてみて、AIの反応を見ながら軌道修正していく。この「対話的」なスタンスこそが、AIを使いこなすための鍵なのです。
ここまでの話をまとめましょう。
- プロンプトは難しい呪文ではありません。部下への「指示メモ」です
- 一発で100点を目指す必要はありません。「書いて、試して、修正する」サイクルで育てましょう
- AIとの関係は「命令」ではなく「対話」です。キャッチボールを楽しみましょう
では、具体的にどんな「指示メモ」を書けばいいのでしょうか。次のセクションでは、AIへの指示を格段に良くする「4つの栄養素」をご紹介します。この型を覚えるだけで、あなたのプロンプトは見違えるように成長するはずです。
指示の黄金フォーマット ── 4つの栄養素
4つの栄要素を覚えるだけで、AIの出力が劇的に変わる
前のセクションで、プロンプトは「部下への指示メモ」だとお伝えしました。では、良い指示メモとは、どんなものでしょうか。
ここで、一つ質問です。次の2つの指示、どちらが良い成果物につながると思いますか?
指示A:「新商品の企画書を書いて」
指示B:「あなたは10年経験のあるマーケターです。20代女性向けの新しいスキンケア商品の企画書を作成してください。競合との差別化ポイントを3つ含め、A4で2枚以内にまとめてください。箇条書きではなく、読みやすい文章形式でお願いします」
答えは明らかでしょう。指示Bのほうが、はるかに具体的で、AIも何を求められているのかを正確に理解できます。
では、指示Aと指示Bの違いは何でしょうか。それは、「4つの栄養素」 が含まれているかどうかです。
植物が育つには、水・日光・土・肥料といった栄養素が必要です。同じように、プロンプトが「育つ」ためにも、欠かせない栄養素があります。それが次の4つです。
- 役割(Role):あなたはプロの〇〇です
- 命令(Instruction):何をしてほしいか
- 制約(Constraint):文字数、トーン、禁止事項
- 出力形式(Output Format):表形式、箇条書きなど
この4つを意識するだけで、AIの出力は見違えるように良くなります。一つずつ、詳しく見ていきましょう。
【Role(役割)】── AIに「仮面」をかぶせる
最初の栄養素は 「役割(Role)」 です。
AIに指示を出すとき、最初に「あなたは〇〇です」と役割を与えてみてください。たったこれだけのことで、回答の質が大きく変わります。
なぜでしょうか。それは、役割を与えることで、AIが「どんな視点で」「どんな専門性を持って」回答すべきかを理解できるからです。
たとえば、「マーケティングについて教えて」と聞くのと、「あなたは大手広告代理店で10年働いたマーケティングのプロです。マーケティングについて教えてください」と聞くのでは、返ってくる回答の深さがまったく違います。
役割設定の例をいくつかご紹介しましょう。
- 「あなたはベテランの編集者です。厳しい目で文章をチェックしてください」
- 「あなたは新入社員に優しく教える先輩社員です。専門用語を使わずに説明してください」
- 「あなたは経営コンサルタントです。経営者の視点でアドバイスをください」
- 「あなたは5歳の子どもにもわかるように説明する先生です」
ポイントは、具体的であればあるほど良い ということです。「マーケター」よりも「10年経験のあるマーケター」、「編集者」よりも「ベストセラーを何冊も手がけた編集者」のほうが、AIはより具体的なイメージを持って回答できます。
役割設定は、AIに「仮面」をかぶせるようなものです。その仮面に合った演技を、AIはしてくれるのです。
【Instruction(命令)】── 「何を」「どうする」を明確に
2つ目の栄養素は 「命令(Instruction)」 です。これは、AIに「何をしてほしいか」を伝える部分です。
当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、意外とここが曖昧になっている指示が多いのです。
よくある失敗例を見てみましょう。
ダメな例:「このデータについて何か教えて」
これでは、AIは何をすればいいのかわかりません。分析してほしいのか、要約してほしいのか、問題点を指摘してほしいのか。AIは困ってしまい、あたりさわりのない回答を返すことになります。
良い例:「このデータの売上傾向を分析し、前年比で特に変化が大きい3つの項目を挙げてください」
このように、「何を」「どうする」を動詞で明確に 伝えることが大切です。
命令を明確にするためのコツをいくつかご紹介します。
① 動詞で締める
「〇〇について」で終わらせず、「〇〇を分析してください」「〇〇を作成してください」「〇〇を比較してください」のように、具体的な動詞で締めましょう。
② 「いい感じに」は禁句
「いい感じにまとめて」「適当にお願い」といった曖昧な表現は避けましょう。何が「いい感じ」なのかは、人によって違います。AIも困ってしまいます。
③ 複数の指示は番号で整理する
やってほしいことが複数ある場合は、番号付きのリストで整理しましょう。
以下の3つのタスクを順番に行ってください。
1. この文章の誤字脱字をチェックする
2. 読みにくい箇所を指摘する
3. 改善案を提示する
このように整理することで、AIは一つずつ確実にタスクをこなしてくれます。
【Constraint(制約)】── 「縛り」が自由を生む
3つ目の栄養素は 「制約(Constraint)」 です。
「制約」と聞くと、窮屈なイメージを持たれるかもしれません。しかし、実は 制約があるからこそ、AIは的確なアウトプットを出せる のです。
たとえば、「自由に書いて」と言われるよりも、「200文字以内で書いて」と言われたほうが、書きやすくありませんか? 制約は、思考の範囲を絞り、焦点を定める役割を果たします。
制約には、大きく分けて3つの種類があります。
① 文字数・分量の制約
- 「200文字以内でまとめてください」
- 「3つのポイントに絞ってください」
- 「A4で1枚に収まるようにしてください」
- 「5分で読める長さでお願いします」
② トーン・文体の制約
- 「カジュアルな口調でお願いします」
- 「フォーマルなビジネス文書として書いてください」
- 「小学生にもわかる言葉で説明してください」
- 「専門家同士の議論として書いてください」
③ 禁止事項の制約
- 「専門用語は使わないでください」
- 「ネガティブな表現は避けてください」
- 「具体的な数字は出さないでください」
- 「競合他社の名前は出さないでください」
特に効果的なのが、「禁止事項」を伝えること です。「〇〇してください」だけでなく、「△△はしないでください」と伝えることで、AIの出力をより正確にコントロールできます。
制約は、AIへの「ガードレール」のようなものです。道の両側にガードレールがあるからこそ、安心してスピードを出せる。制約があるからこそ、AIは迷わず、あなたの求める方向に全力で走れるのです。
【Output Format(出力形式)】── 欲しい形で受け取る
4つ目の栄養素は 「出力形式(Output Format)」 です。
同じ情報でも、どんな形式で受け取るかによって、使いやすさはまったく違います。AIに指示を出すとき、「どんな形で出力してほしいか」を明確に伝えましょう。
主な出力形式とその使い分けをご紹介します。
① 表形式
複数の項目を比較したいとき、情報を整理したいときに最適です。
「以下の5つの商品を、価格・機能・評価の3つの観点で比較し、表形式でまとめてください」
② 箇条書き
要点を素早く把握したいときに便利です。
「このレポートのポイントを、箇条書きで5つにまとめてください」
③ 文章形式
報告書やメールの下書きなど、そのまま使いたいときに適しています。
「お客様へのお詫びメールの文案を、敬語を使った文章形式で作成してください」
④ ステップ形式
手順や流れを説明するときに効果的です。
「この作業の手順を、ステップ1、ステップ2...という形式で説明してください」
⑤ 見出し付き構成
長い文章を整理するときに使います。
「この内容を、見出しと小見出しをつけた構成でまとめてください」
出力形式を指定するだけで、AIの出力をそのまま使える ようになります。後から自分で整形する手間が省け、作業効率が大幅にアップします。
4つの栄養素を組み合わせる
ここまで、4つの栄養素を一つずつ見てきました。最後に、これらを組み合わせた「完成形」の例をお見せしましょう。
悪い例(栄養素なし):
新商品の企画書を書いて
良い例(4つの栄養素入り):
【役割】
あなたは、大手化粧品メーカーで10年の経験を持つマーケティングマネージャーです。
【命令】
20代後半〜30代前半の働く女性をターゲットにした、新しいオールインワンジェルの商品企画書を作成してください。
【制約】
・競合商品との差別化ポイントを3つ以上含めること
・専門用語は避け、経営層にも伝わる言葉で書くこと
・全体でA4サイズ2枚以内に収めること
【出力形式】
以下の構成で作成してください。
1. 商品コンセプト(3行程度)
2. ターゲット顧客像
3. 競合との差別化ポイント(3つ)
4. 価格帯の提案
5. 販売チャネルの提案
いかがでしょうか。4つの栄養素を意識するだけで、これほど具体的で実用的な指示が書けるようになります。
もちろん、毎回すべての栄養素を完璧に入れる必要はありません。状況に応じて、必要な栄養素を選んで使えばいいのです。大切なのは、この4つの視点を「引き出し」として持っておくこと。AIの出力がイマイチだと感じたら、「どの栄養素が足りていないかな?」と振り返ってみてください。
次のセクションでは、実際にダメな指示を修正しながら「完璧な指示」に育てていく過程を、具体的にお見せします。
実践:ダメな指示を「完璧な指示」に育てる
「育てる」とは、細かいチューニングの積み重ね
前のセクションで、プロンプトの4つの栄養素について学びました。では、実際に「プロンプトを育てる」とは、どういう作業なのでしょうか。
ここで、一つ大切なことをお伝えします。
プロンプトを育てるとは、毎回ゼロから作り直すことではありません。むしろ、小さな調整を繰り返すこと なのです。
実際のAI活用の場面を思い浮かべてみてください。
「もう少し短くして」 「もっとカジュアルな感じで」 「箇条書きじゃなくて文章にして」 「この部分はいらないから省いて」
こうした ちょっとした微調整 を重ねることで、AIの出力は少しずつあなたの期待に近づいていきます。これこそが、プロンプトを「育てる」ということの本質です。
そして、この微調整の多くは、「制約(Constraint)」のチューニング で解決できます。役割や命令を大きく変える必要はありません。分量、トーン、形式、禁止事項——こうした制約を少しずつ調整するだけで、出力は驚くほど変わるのです。
このセクションでは、その実例をお見せしましょう。
【ケーススタディ】お詫びメールの作成
シチュエーション
あなたは営業担当者です。お客様への納品が3日遅れてしまい、お詫びのメールを送る必要があります。忙しいので、AIにたたき台を作ってもらうことにしました。
4つの栄養素を意識して、まずは「70点くらいの指示」を書いてみます。
【最初の指示】70点のスタート地点
【役割】あなたはビジネスメールの作成が得意な秘書です。
【命令】お客様への納品が3日遅れたことをお詫びするメールを作成してください。
【制約】丁寧なビジネス文書として書いてください。
【出力形式】メール本文のみを出力してください。
4つの栄養素は一応入っています。悪くない指示です。さて、AIはどんな出力を返してくるでしょうか。
AIの出力:
件名:納品遅延のお詫び
株式会社〇〇 △△様
平素より大変お世話になっております。 株式会社□□の××でございます。
このたびは、弊社製品の納品に際しまして、当初のご案内より3日間の遅延が生じましたこと、心より深くお詫び申し上げます。
本来であれば、〇月〇日にお届けする予定でございましたが、弊社内の手配に不備があり、〇月〇日の納品となってしまいました。お客様には多大なるご迷惑とご心配をおかけいたしましたこと、重ねてお詫び申し上げます。
今回の事態を厳粛に受け止め、今後このようなことがないよう、社内の管理体制を見直し、再発防止に努めてまいる所存でございます。
何卒ご容赦くださいますよう、伏してお願い申し上げます。
今後とも変わらぬお引き立てを賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
敬具
株式会社□□ 営業部 ×× TEL:XXX-XXXX-XXXX Email:xxx@xxx.co.jp
悪くありません。ビジネスメールとしての体裁は整っています。しかし、いくつか気になる点があります。
- ちょっと長い(もっとコンパクトにしたい)
- 硬すぎる(「伏してお願い申し上げます」は大げさ)
- 具体的な日付が〇〇のまま(そこは自分で入れるからいい)
これらを、制約のチューニング で調整していきましょう。
【1回目の水やり】「長い」→ 分量を制約する
まず、長さの問題を解決します。制約に 分量の指定 を追加してみましょう。
【役割】あなたはビジネスメールの作成が得意な秘書です。
【命令】お客様への納品が3日遅れたことをお詫びするメールを作成してください。
【制約】
・丁寧なビジネス文書として書いてください
・本文は150文字程度に収めてください ←★追加
【出力形式】メール本文のみを出力してください。
AIの出力:
件名:納品遅延のお詫び
株式会社〇〇 △△様
平素より大変お世話になっております。
このたびは弊社製品の納品が3日遅延いたしましたこと、心よりお詫び申し上げます。ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。
今後は再発防止に努めてまいります。何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます。
株式会社□□ 営業部 ××
だいぶコンパクトになりました。しかし、まだ少し硬い印象があります。「何卒ご容赦くださいますよう」という表現が、普段のやり取りのトーンと合わない気がします。
【2回目の水やり】「硬い」→ トーンを調整する
次に、文体のトーンを調整します。制約に トーンの指定 を追加しましょう。
【役割】あなたはビジネスメールの作成が得意な秘書です。
【命令】お客様への納品が3日遅れたことをお詫びするメールを作成してください。
【制約】
・丁寧なビジネス文書として書いてください
・本文は150文字程度に収めてください
・過度にへりくだらず、誠実さが伝わるトーンで ←★追加
【出力形式】メール本文のみを出力してください。
AIの出力:
件名:納品遅延のお詫び
株式会社〇〇 △△様
いつもお世話になっております。
このたびは弊社製品の納品が3日遅れてしまい、大変申し訳ございませんでした。ご迷惑をおかけしたことを、心よりお詫びいたします。
今後このようなことがないよう、十分注意してまいります。引き続きよろしくお願いいたします。
株式会社□□ 営業部 ××
かなり自然になりました。「伏して」「何卒」といった仰々しい表現が消え、誠実でありながら読みやすいトーンになっています。
ただ、もう一つ気になることがあります。今回の遅延は、すでにお客様に電話でお詫び済みです。メールはその補足なので、経緯の説明は不要。むしろ、今後の対応 についてもう少し触れたいところです。
【3回目の水やり】「不要な部分がある」→ 禁止事項と追加要素を指定する
最後の調整です。禁止事項 と 含めてほしい要素 を明確にします。
【役割】あなたはビジネスメールの作成が得意な秘書です。
【命令】お客様への納品が3日遅れたことをお詫びするメールを作成してください。
【制約】
・丁寧なビジネス文書として書いてください
・本文は150文字程度に収めてください
・過度にへりくだらず、誠実さが伝わるトーンで
・遅延の経緯や原因の説明は不要(すでに電話で伝えた) ←★追加
・今後の再発防止への意気込みを含めてください ←★追加
【出力形式】メール本文のみを出力してください。
AIの出力:
件名:納品遅延のお詫び
株式会社〇〇 △△様
いつもお世話になっております。
先ほどはお電話にて失礼いたしました。あらためまして、このたびの納品遅延について、メールでもお詫び申し上げます。
今後は納期管理を徹底し、このようなことがないよう努めてまいります。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
株式会社□□ 営業部 ××
これで完成です。
電話でのやり取りを踏まえた文面になり、余計な説明もなく、今後への前向きな姿勢も伝わる。そのまま送れるクオリティ になりました。
3回の「水やり」を振り返る
今回の調整を整理してみましょう。
| 回 | 感じた問題 | 調整した制約 |
|---|---|---|
| 1回目 | 長すぎる | 「150文字程度に」を追加 |
| 2回目 | 硬すぎる | 「過度にへりくだらず」を追加 |
| 3回目 | 不要な説明がある | 「経緯の説明は不要」「再発防止を含める」を追加 |
注目していただきたいのは、役割も命令も変えていない ということです。変えたのは、すべて 制約(Constraint) の部分だけ。それも、一度に大きく変えるのではなく、一つずつ微調整しています。
これが、プロンプトを「育てる」リアルな姿です。
90点で「完成」と呼ぶ勇気
ここで、もう一つ大切な話をさせてください。
先ほどのお詫びメール、「これで完成です」とお伝えしました。しかし、正直に言えば、100点満点ではありません。お客様の会社名、担当者名、自分の署名——これらは自分で入力する必要があります。細かい言い回しも、「ここはもう少しこうしたい」という部分があるかもしれません。
でも、それでいいのです。
プロンプトを育てる作業には、「収穫逓減の法則」 が働きます。最初の数回の調整で、出力は劇的に良くなります。50点が70点に、70点が85点に。しかし、85点を90点にするのは少し手間がかかり、90点を95点にするのはさらに大変。95点を100点にしようとすると、それまでの何倍もの労力が必要になることがあります。
ここで考えてみてください。
90点のたたき台を手に入れるのに3分。残りの10点を自分で直すのに2分。合計5分。
一方で、100点を目指してプロンプトを調整し続けるとどうなるか。
問題は、「あと何回調整すれば100点になるのか、誰にもわからない」 ということです。
もしかすると、あと1回の修正で完璧になるかもしれません。しかし、5回やっても10回やっても「あと少し」が残り続けるかもしれない。そもそも、あなたが思い描く「100点」が、プロンプトの調整だけで実現できるものなのかどうかすら、やってみなければわかりません。
ゴールが見えない作業に時間を費やし続けるのは、精神的にも消耗します。「あと少しで完璧になるはず」と思いながら、いつまでも終わらない調整を続ける——これは、AIを使って生産性を上げるどころか、逆効果です。
だからこそ、「90点で手を打つ」という判断が大切 なのです。
AIの本当の価値は、「完璧な成果物を一発で出すこと」ではありません。「90点のたたき台を素早く作ること」にあるのです。
最後の仕上げは、人間がやればいい。むしろ、最後に自分の手を入れることで、その文章はあなた自身の責任で送る「あなたの文章」になります。AIが作ったものを丸投げするのではなく、AIと協力して作り上げた成果物として、自信を持って世に出せるのです。
「完璧」を目指さないことで得られるもの
90点で手を打つ勇気を持つと、こんなメリットがあります。
① スピードが上がる 100点を目指して粘る時間を、他の仕事に使えます。AIを使う最大のメリットは「時短」です。そのメリットを、完璧主義で台無しにしないでください。
② ストレスが減る 「完璧な指示を書かなければ」というプレッシャーから解放されます。「だいたい良ければOK、あとは自分で直す」と思えれば、気軽にAIを使えるようになります。
③ 自分のスキルも活きる 最後の10点を仕上げる部分には、あなたの経験、センス、相手との関係性への理解が活きます。AIにはできない「人間ならでは」の付加価値を発揮できる場面です。
完璧を求めすぎないこと。これも、AIと上手に付き合うための大切なマインドセットです。
よく使う「制約チューニング」のパターン
最後に、実務でよく使う制約チューニングのパターンをまとめておきます。困ったときの「調整の引き出し」として、ぜひ活用してください。
【分量の調整】
| 問題 | 追加する制約 |
|---|---|
| 長すぎる | 「〇〇文字以内で」「3行で」「要点だけ」 |
| 短すぎる | 「詳しく」「具体例を含めて」「背景も説明して」 |
| 項目が多すぎる | 「3つに絞って」「最も重要なものだけ」 |
【トーンの調整】
| 問題 | 追加する制約 |
|---|---|
| 硬すぎる | 「カジュアルに」「会話調で」「親しみやすく」 |
| 軽すぎる | 「フォーマルに」「ビジネス文書として」「敬語を使って」 |
| 大げさ | 「シンプルに」「過度にへりくだらず」 |
| 冷たい | 「温かみのある表現で」「共感を示して」 |
【内容の調整】
| 問題 | 追加する制約 |
|---|---|
| 余計な情報がある | 「〇〇は含めないで」「〇〇には触れないで」 |
| 情報が足りない | 「〇〇も含めて」「〇〇について必ず触れて」 |
| 的外れ | 「〇〇の観点で」「〇〇を意識して」 |
【形式の調整】
| 問題 | 追加する制約 |
|---|---|
| 箇条書きにしたい | 「箇条書きで」「リスト形式で」 |
| 文章にしたい | 「文章形式で」「箇条書きは使わないで」 |
| 表にしたい | 「表形式で」「比較表にして」 |
AIを「壁打ち相手」にする3つのテクニック
プロンプトを育てるのは、一人で悩む作業ではありません。AIを「壁打ち相手」として活用することで、より効率的にプロンプトを磨くことができます。
ここでは、特に便利な3つのテクニックをご紹介します。
【テクニック1】改善点を聞く
AIの出力を見て「なんかイマイチだけど、どこが悪いかわからない」というとき。そんなときは、AIに直接聞いてしまいましょう。
今の出力をもっと良くするには、私の指示にどんな情報を追加すればいいですか?
この出力の改善点を3つ挙げてください。
AIは、自分では気づかなかった視点を教えてくれます。「ターゲット読者を明確にすると良いですよ」「具体的な数字があると説得力が増します」といった具合に、次の一手を示してくれるのです。
【テクニック2】欲しい出力の「お手本」を見せる
「もっとこういう感じにしてほしい」——そう思っても、言葉でうまく説明できないことがあります。トーンやニュアンスは、特に言語化が難しいものです。
そんなときは、欲しい出力のお手本を見せてしまいましょう。
以下は、私が以前書いたお詫びメールです。このトーンに合わせて、今回のメールを書き直してください。
---
(お手本のメールを貼り付ける)
---
過去に自分が書いた文章、先輩が書いた文章、ネットで見つけた「こういう感じがいい」と思った文章——何でも構いません。「これに寄せて」とお手本を示すだけで、AIは驚くほど正確にトーンを合わせてくれます。
言葉で説明するより、実例を見せるほうが圧倒的に早い。これは、人間の部下に仕事を教えるときと同じですね。
【テクニック3】改善したプロンプトを提案してもらう
少し上級者向けのテクニックですが、プロンプト自体の改善案をAIに考えてもらう こともできます。
以下の指示で、思ったような出力が得られませんでした。
この指示をどう改善すればいいか、具体的な修正案を提示してください。
---
(うまくいかなかったプロンプトを貼り付ける)
---
すると、AIはこんなふうに答えてくれます。
以下の点を改善することをおすすめします。
・役割をより具体的に:「ビジネスメールが得意な秘書」→「IT企業で5年働いた経験のある秘書」
・読者を明確に:誰に向けたメールかを指定すると、トーンが安定します
・NGワードを指定:「何卒」「伏して」などの硬い表現を避けたい場合は、明示的に禁止しましょう
このように、プロンプトの書き方自体をAIから学ぶことができるのです。
これら3つのテクニックに共通するのは、AIを「対話の相手」として活用する という姿勢です。一方的に指示を出すのではなく、AIと一緒にプロンプトを育てていく。この協働の感覚をつかめると、AI活用はぐっと楽になります。
次のセクションでは、こうして育てたプロンプトを「資産」として保存し、何度でも再利用する方法をご紹介します。
育てたプロンプトを「資産」にする
良いプロンプトは「使い捨て」にしない
前のセクションで、プロンプトを育てる方法を学びました。制約を少しずつ調整し、AIとの対話を重ねることで、あなたの仕事にぴったり合った指示が完成したはずです。
さて、ここで一つ質問です。
その育てたプロンプト、使い終わったらどうしますか?
「え、そのまま閉じて終わりですけど……」
もし、そう思ったなら、とてももったいないことをしています。
せっかく時間をかけて育てたプロンプトは、何度でも使える「資産」 です。一度作ったら終わりではなく、保存して、再利用して、さらに磨いていく。そうすることで、あなたのAI活用はどんどん効率的になっていきます。
このセクションでは、プロンプトを資産として活用するための具体的な方法をご紹介します。
再利用可能な「テンプレート」として保存する
育てたプロンプトを資産にする第一歩は、テンプレート化 です。
たとえば、前のセクションで作ったお詫びメールのプロンプトを思い出してください。
【役割】あなたはビジネスメールの作成が得意な秘書です。
【命令】お客様への納品が3日遅れたことをお詫びするメールを作成してください。
【制約】
・丁寧なビジネス文書として書いてください
・本文は150文字程度に収めてください
・過度にへりくだらず、誠実さが伝わるトーンで
・遅延の経緯や原因の説明は不要(すでに電話で伝えた)
・今後の再発防止への意気込みを含めてください
【出力形式】メール本文のみを出力してください。
このプロンプトは「納品が3日遅れた」という特定の状況向けに作られています。しかし、少し手を加えるだけで、さまざまなお詫びメールに使えるテンプレート に変身します。
「変数化」のテクニック
テンプレート化のコツは、状況によって変わる部分を「変数」として括り出す ことです。そして、その変数は プロンプトの冒頭でまとめて設定 できるようにしておくと、使い勝手が格段に良くなります。
==============================
【変数設定】使うときはここだけ書き換える
==============================
■ トラブルの内容:納品が3日遅れた
■ 文字数:150文字程度
■ 省略したい内容:遅延の経緯や原因の説明は不要(すでに電話で伝えた)
■ 含めたい要素:今後の再発防止への意気込み
==============================
【役割】あなたはビジネスメールの作成が得意な秘書です。
【命令】お客様への上記トラブルについてお詫びするメールを作成してください。
【制約】
・丁寧なビジネス文書として書いてください
・本文は上記の文字数に収めてください
・過度にへりくだらず、誠実さが伝わるトーンで
・上記「省略したい内容」は含めないでください
・上記「含めたい要素」を必ず入れてください
【出力形式】メール本文のみを出力してください。
このように、変更が必要な部分を冒頭にまとめておく ことで、使うときの手間が大幅に減ります。プロンプト本体には触れず、冒頭の変数設定だけを書き換えればいいからです。
別の場面で使うときは、変数部分だけを変更します。
==============================
【変数設定】使うときはここだけ書き換える
=============================
■ トラブルの内容:請求書の金額に誤りがあった
■ 文字数:200文字程度
■ 省略したい内容:なし
■ 含めたい要素:訂正した請求書を添付した旨、再発防止策
==============================
※ここでは分かりやすく「■」を使っていますが、実務では [ ] や { } で囲むとAIが認識しやすくなります。
こうしておけば、納品遅延だけでなく、請求ミス、対応の遅れ、品質トラブルなど、あらゆるお詫びメールに対応できる汎用テンプレート になります。
プロンプト管理の実践方法
テンプレート化したプロンプトは、きちんと整理して保存しておきましょう。「あのプロンプト、どこにやったっけ……」と探し回るようでは、資産として活用できません。
おすすめの管理方法をいくつかご紹介します。
【方法1】ノートアプリで管理する
Notion、Evernote、OneNote、Apple メモなど、普段お使いのノートアプリで管理する方法です。
メリット:
- 手軽に始められる
- 検索機能で素早く見つけられる
- スマホからもアクセスできる
整理のコツ:
- 「プロンプト集」というノートブック(またはフォルダ)を作る
- カテゴリごとにページを分ける(メール用、企画書用、分析用など)
- 各プロンプトには「どんな場面で使うか」のメモを添える
【方法2】スプレッドシートで管理する
ExcelやGoogleスプレッドシートで一覧表として管理する方法です。
メリット:
- 一覧性が高く、比較しやすい
- フィルタや検索で絞り込みができる
- チームでの共有がしやすい
おすすめの列構成:
| カテゴリ | プロンプト名 | 用途 | プロンプト本文 | 作成日 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| メール | お詫びメール | トラブル時の謝罪 | (本文) | 2024/1/15 | 電話後のフォロー用 |
| 企画書 | 新商品企画 | 商品アイデア出し | (本文) | 2024/1/20 | 冷凍食品向け |
【方法3】専用のプロンプト管理ツールを使う
最近では、プロンプトを管理するための専用ツールも登場しています。チームでの共有や、バージョン管理などの機能が充実しているものもあります。
ただし、最初から凝ったツールを導入する必要はありません。まずはシンプルに、普段使っているノートアプリやスプレッドシートから始めてみてください。大切なのは、「保存する習慣」を身につけること です。
チームで共有して「組織の知恵」にする
プロンプトの資産化をさらに一歩進めると、チームや組織全体での共有 という可能性が見えてきます。
考えてみてください。あなたが苦労して育てた「お詫びメールのプロンプト」は、同じ部署の同僚にとっても役立つはずです。逆に、先輩が作った「議事録作成のプロンプト」があれば、あなたの仕事も楽になるでしょう。
プロンプトを個人の資産にとどめず、チームで共有することで、組織全体のAI活用レベルが底上げされます。
共有のための工夫
チームでプロンプトを共有するときは、いくつかの工夫が必要です。
① 誰でも使えるように「説明」を添える
自分だけが使うプロンプトなら、多少雑でも問題ありません。しかし、他の人も使うなら、「どんな場面で使うのか」「変数をどう埋めればいいのか」といった説明を添えましょう。
② 成功事例とセットで共有する
「このプロンプトを使ったら、こんな出力が得られました」という成功事例があると、他の人も安心して使えます。実際の出力例をセットで共有するのがおすすめです。
③ フィードバックを集めて改善する
共有したプロンプトを使った人から「ここをこう変えたらもっと良くなった」というフィードバックが返ってくることがあります。そうした声を取り入れて、プロンプトをさらに磨いていきましょう。チームの知恵が集まることで、プロンプトはより強力な資産になります。
SE的視点:要件定義とプロンプトの共通点
ここで少し、私の本業であるSE(システムエンジニア)の視点からお話しさせてください。
SEの仕事に「要件定義」というものがあります。これは、システムを作る前に「何を作るのか」「どんな機能が必要か」「どんな制約があるか」を明確にする工程です。
実は、プロンプトを書く作業は、この要件定義とよく似ています。
- 役割 → システムの目的や位置づけ
- 命令 → 実現したい機能
- 制約 → 性能要件、セキュリティ要件など
- 出力形式 → 画面設計、帳票設計
どちらも「相手(AIまたは開発チーム)に、やってほしいことを正確に伝える」ための作業です。
ただし、大きな違いがある
要件定義とプロンプトには、決定的な違いがあります。
要件定義は、一度決めたら簡単には変えられません。システム開発が始まってから「やっぱりここを変えたい」と言うと、大きな手戻りが発生します。だから、最初の段階で完璧を目指して、何度もレビューを重ねます。
一方、プロンプトは いつでも気軽に変えられます。
AIの出力を見て「ちょっと違うな」と思ったら、すぐに修正できる。何度やり直しても、コストはほぼゼロ。これが、AIとの協働の大きなメリットです。
だからこそ、プロンプトは 「最初から完璧を目指す」よりも「素早く試して改善する」 というアジャイル的なアプローチが有効なのです。
第1章で「要件定義に似ているが、もっとアジャイルでいい」とお伝えしたのは、このことです。完璧な指示を最初から書こうとして固まってしまうより、まずは書いてみて、対話しながら育てていく。そのほうが、結果的に良いアウトプットにたどり着けます。
プロンプトは「育てて、貯めて、回す」
このセクションで学んだことをまとめましょう。
プロンプトを資産として活用するサイクルは、次のようになります。
① 育てる 最初のプロンプトを書き、AIとの対話を通じて磨いていく。
② 貯める 完成したプロンプトをテンプレート化し、整理して保存する。
③ 回す 保存したプロンプトを再利用し、新しい場面に適用する。使いながらさらに改善する。
このサイクルを回し続けることで、あなたの「プロンプト資産」はどんどん増えていきます。
プロンプトが増える = チーム員が増える
本書のテーマを思い出してください。AIは「最強の新人たち」であり、あなたはその「プレイングマネージャー」です。
この比喩で考えると、プロンプトのテンプレートを1つ作ることは、「特定の仕事ができるチーム員」を1人雇うこと に似ています。
- お詫びメールのテンプレート → 「謝罪対応が得意な秘書」が1人増えた
- 議事録作成のテンプレート → 「議事録作成のプロ」が1人増えた
- データ分析のテンプレート → 「分析が得意なアシスタント」が1人増えた
テンプレートが10個あれば、あなたには10人のチーム員がいるようなものです。20個あれば20人。それぞれが特定の仕事を素早くこなしてくれます。
しかも、この「チーム員」たちは、24時間働けて、文句も言わず、何人増えても(多くのサービスでは)月額のサブスクリプション費用だけ。人間を1人雇うことを考えれば、圧倒的なコストパフォーマンスです。呼べばすぐに来てくれて、指示どおりに動いてくれる。まさに「最強の新人」たちです。
プロンプト資産が増えれば増えるほど、あなたのチームは強くなり、対応できる仕事の幅と量が拡大していきます。自分ひとりを「最強のチーム」に変える——それが、プロンプトを資産化することの本当の意味なのです。
まとめ
このセクションで学んだこと
ここでは、AIを動かす「言葉の技術」について学んできました。ここで、重要なポイントを振り返っておきましょう。
プロンプトは「呪文」ではなく「指示メモ」
プロンプトは、難しいプログラミング言語でも、特別な呪文でもありません。その正体は、部下への「指示メモ」や「引き継ぎ書」と同じです。普段、同僚に仕事を頼むように、自然な言葉で伝えれば、AIは理解してくれます。
一発で100点を目指さない
プロンプトは「書く」ものではなく「育てる」ものです。最初から完璧を目指す必要はありません。70点のスタートで十分。AIの出力を見ながら「書いて、試して、修正する」サイクルを回すことで、プロンプトは成長していきます。
4つの栄養素を意識する
AIへの指示を格段に良くする「4つの栄養素」を学びました。
- 役割(Role):「あなたはプロの〇〇です」とAIに役を与える
- 命令(Instruction):何をしてほしいかを明確に伝える
- 制約(Constraint):文字数、トーン、禁止事項などの「縛り」を設ける
- 出力形式(Output Format):表、箇条書き、文章など望む形を指定する
この4つを意識するだけで、AIの出力は見違えるように良くなります。
「制約」の微調整が現実的
プロンプトを育てる作業の多くは、「制約(Constraint)」のチューニングで解決できます。長すぎれば文字数を指定し、硬すぎればトーンを調整し、余計な情報があれば禁止事項を追加する。小さな調整の積み重ねが、プロンプトを磨いていきます。
90点で「完成」と呼ぶ勇気
100点を目指してプロンプトを調整し続けると、ゴールの見えない作業に陥ることがあります。90点のたたき台を素早く手に入れ、残りの10点は自分で仕上げる。この割り切りが、AIを効率的に活用するコツです。
育てたプロンプトは「資産」になる
完成したプロンプトは、テンプレート化して保存しましょう。変数を冒頭にまとめておけば、さまざまな場面で再利用できます。プロンプトが増えるということは、あなたの「チーム員」が増えるということ。資産が増えるほど、対応できる仕事の幅と量が拡大していきます。
キーフレーズ
覚えておきたいキーフレーズをまとめます。
| キーフレーズ | 意味 |
|---|---|
| 指示メモ | プロンプトの本質。部下への依頼と同じ |
| 4つの栄養素 | 役割・命令・制約・出力形式 |
| 水やり | プロンプトを少しずつ修正して育てること |
| 90点で手を打つ | 完璧を目指さず、残りは自分で仕上げる |
| 変数化 | テンプレートの変更箇所を冒頭にまとめる技術 |
| プロンプト資産 | 再利用可能なテンプレートの蓄積 |
次回への橋渡し
AIへの指示の仕方がわかったところで、いよいよ実践編に入ります。
次回からは、具体的な「チーム員」たちを紹介していきます。最初に登場するのは、「秘書・ライター」 というチーム員。メールの返信、議事録の作成、文章のドラフト——日々の「書く仕事」を劇的に効率化してくれる存在です。
第2章で学んだ「4つの栄養素」と「制約のチューニング」を武器に、さっそく最初のチーム員を使いこなしていきましょう。
あなたの「最強のチーム」づくりが、ここから本格的に始まります。