Google Opal入門 - ノーコードAIで要約・抽出ツールを構築

2025年10月15日

導入

従来のアプリ開発はプログラミング知識と時間コストを要しました。

この障壁を解消するツールとして、ノーコード・ローコードプラットフォームが普及しています。

Opal(オパール)はGoogleが提供する実験的なノーコードAIツールです。

自然言語指示(プロンプト)のみでAIミニアプリの原型を自動生成する、「バイブコーディング」を特徴としています。

米国では2025年7月24日に発表され、日本を含む15カ国への提供拡大は2025年10月7日(現地時間)に行われました。

この記事では最もシンプルなAI活用事例である情報要約を通じて、Opalの具体的な操作フローと効率性、初期の制約を解説します。

動画版

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OpalとAppSheetの比較:適性の分離

同じくGoogleが提供するAppともにアプリを作成するツールですが、次のような違いがあります。

主要な目的

  • Opal: 複雑なAIワークフロー自動化(実用性の検証、速いリリースが特徴)。AIの推論や生成能力を活用します。
  • AppSheet: 業務データ管理とプロセス自動化。既存データ(Sheets、DB)に基づく実用的な業務アプリの構築を担います。

得意なこと

  • Opal: 長文要約、画像生成、レポート骨子作成など、インテリジェンス(知的な情報加工)が必要なタスクに適しています。
  • AppSheet: 在庫管理、顧客台帳、承認ワークフローなど、トランザクション(確実な記録・実行)が必要なタスクに適しています。

価格

  • Opal: 無料。
  • AppSheet: 無料で利用できる範囲には制限がある。

実践事例:要約・キーワード抽出ツールの作成手順

具体的なアプリ作成を通じて、Opalの入出力ロジックと利用モデルの現状を解説します。

利用可能なAIモデルと価格

Opalのコア機能は、Googleの基盤となるAIモデルへのアクセスによって成立しています。

利用AIモデル

主にGeminiモデル(テキスト処理、要約、推論)が使用されます。

現状の費用(2025年10月)

無料です(Opalの実験期間中)。AIモデル利用に伴う従量課金は現時点では発生しません。

価格に関する留意点

Opalは現在無料ですが、将来的には、AIモデルのトークン消費量や利用頻度に応じた従量課金が導入される可能性があります。

現時点での無料利用は、将来のコストリスクを考慮に入れた上で利用する必要があります。

自然言語によるアプリ生成(プロンプト入力)

Opalへのアクセス

https://opal.withgoogle.com/」へアクセスし、「Sign in」か「Try Opal」をクリックしてログインします。

Googleアカウントでログイン後、「Create New」をクリックし、新規アプリを作成します。

アプリが無い場合は、ログイン後に自動的に新規アプリが作成されます。

プロンプト入力

機能と出力形式を厳密に定義した以下のプロンプトを入力します。

ユーザーが入力した長い文章(またはWebサイトのURL)を受け取り、
以下の2つの項目を日本語で出力するアプリを作成してください。
1. 内容を3行でまとめた簡潔な要約(要約のタイトルを付けてください)。
2. その文章から抽出された最も重要なキーワードを5つ(箇条書き形式で出力してください)。
アプリのタイトルを「要約・キーワード抽出ツール」としてください。

Opalがこの指示を解釈し、「入力」「AI処理」「出力」の3ブロック構造を自動生成します。

※余計なブロックも生成する場合があります。その場合は削除が必要です。

アプリの実行

画面上の「App」か、入力ブロックをクリックした時に右側に表示されるプロパティから「Preview」をクリックすると実行モードになります。

実行モードで「Start」をクリックします。元の編集画面に戻る場合は画面上部の「Editor」をクリックします。

次のような結果が表示されます。

その他プロンプト例

SNS投稿案自動生成ツール

ユーザーの入力キーワードに基づき、Web検索結果を分析し、マーケティング用途に適した差別化されたSNS投稿テキストを3つ生成・提案する

特定のキーワードを入力すると、Web上の最新SNS投稿を検索し、そのデータに基づいた自社向け投稿案を3パターン自動生成するアプリを作成してください。

3択クイズ作成ツール

長いマニュアルや教材テキストをAIに入力することで、理解度チェックや復習に利用可能な、問題・選択肢・正解・解説がセットになったクイズを生成する。

ユーザーが長文テキストを入力すると、その内容を理解し、学習用の3択クイズを5問自動生成するアプリを作成してください。各クイズには必ず正解と簡潔な解説を含めること。

商品紹介画像&説明文連動生成

テキスト情報からAIが画像を生成(Imagen)し、その生成された画像の内容を踏まえて最適なキャッチコピーや説明文を生成(Gemini)する、マルチモーダル連携のデモ。

ユーザーが『新製品名』と『特徴』を入力すると、その情報に基づいて製品のイメージ画像を生成し、さらにその画像と特徴に合ったWebサイト用商品説明文を自動で作成するアプリを作成してください。

メール文面トーン変換機

ユーザーの指示(トーン)に従って、既存の文章のスタイルや文体(例:敬語の度合い、表現の柔らかさ)を変換し、コミュニケーションの調整を支援する。

ユーザーが作成途中のメール文を入力し、『フォーマル』、『カジュアル』、『依頼』のいずれかのトーンを選択すると、文脈を保ちつつ選択されたトーンに合わせてメール文を自動で書き換えるアプリを作成してください。

月次レポート自動骨子作成ツール

外部データソース(Google Sheetsなど)を参照し、データの傾向や内容を基に、論理的で構造化されたビジネスレポートのアウトラインを自動生成する。

Google スプレッドシートのURLを入力すると、そのデータの内容(例:売上データ、アクセスログなど)を分析し、『背景』『現状分析』『課題』『結論』の4項目を含む月次レポートの構成案(骨子)を自動で提示するアプリを作成してください。

テスト用データ。このようなデータをGoogle スプレッドシートに転記して、URLだけでアクセス可能な共有設定をして利用します。

指標8月実績9月実績変動率 (前月比)
総売上高1,200,0001,500,000+25%
広告費用150,000300,000+100%
新規顧客獲得数8001,500+87.5%
既存顧客売上900,000850,000-5.60%
利益率20%15%-5pt

まとめ:Opalの機会と限界

Opalは、アイデアをAIワークフローへ変換する効率的なツールとして極めて有用です。特に実用性の検証や速いリリースが得意で、非エンジニアによるAI機能の即時活用を実現します。

しかしサービスが実験的であるため、長期的な安定運用にリスクがあります。

また、AIの出力は常に真実を保証するものではありません。(ハルシネーション

Opalは「AIアプリ開発の第一歩」を圧倒的な速度で踏み出すためのツールです。

過度な期待は持たず、その初期の制約を理解して利用する必要があります。

ただし、Googleの継続的な大規模AIモデルとエコシステムのアップデート次第で、連携可能なサービスやタスクの複雑性が飛躍的に向上する可能性を内包しており、その潜在的な機能拡張の限界は現在未知数です。