【Excel初心者向け】IF関数の使い方完全ガイド|具体例でわかる条件分岐の基本

はじめに:IF関数とは何か?
Excel IF関数は、「もし〇〇なら△△、そうでなければ□□」という日常の判断と同じように働く、とても便利な機能です。たとえば、「もし点数が70点以上なら合格、そうでなければ不合格」といった判定を自動化できます。
この関数はExcelの中でも特に重要で、VLOOKUP関数やXLOOKUP関数と並んで、業務効率化に大きく貢献する機能です。
この記事では、Excel初心者の方でも理解できるよう、IF関数の基本から実践的な使い方まで、具体例を交えながら丁寧に解説します。
IF関数の基本:書き方と意味を理解しよう
IF関数の書式
=IF(論理式, 値が真の場合, 値が偽の場合)
- 論理式…○か×で答えられる質問
値が真の場合
…条件に合う場合値が偽の場合
…条件に合わない場合
この書式を日本語で表現すると: 「もし(条件)が正しければ(Aの結果)を表示し、正しくなければ(Bの結果)を表示する」
各引数の意味
引数 | 必須/省略可 | 説明 |
---|---|---|
論理式 | 必須 | 「AはBより大きいか?」など、○か×か、で答えられる条件を設定します |
値が真の場合 | 必須 | 条件が○(TRUE)のときに表示する結果を指定します |
値が偽の場合 | 必須 | 条件が×(FALSE)のときに表示する結果を指定します |
論理式でよく使う比較演算子
IF関数の論理式では、比較演算子と呼ばれる記号を使って条件を設定します。主に使用する比較演算子は以下の通りです:
演算子 | 意味 | 例 |
---|---|---|
= | 等しい | A1=10(A1セルが10と等しいか) |
> | より大きい | A1>10(A1セルが10より大きいか) |
>= | 以上 | A1>=10(A1セルが10以上か) |
< | より小さい | A1<10(A1セルが10より小さいか) |
<= | 以下 | A1<=10(A1セルが10以下か) |
<> | 等しくない | A1<>10(A1セルが10と等しくないか) |
より詳しい演算子の種類や使い方については、Excelの演算子一覧と使い方をご参照ください。
実践例1:Excel IF関数で合否判定を作る
試験の点数に基づいて合否を自動判定する例で、IF関数の基本を学びましょう。

手順1:合格点を設定する
例えば、C2セルに「70」と入力して合格ラインを設定します。
手順2:IF関数を入力する
D5セルに以下の関数を入力します:
=IF(C5>=C2,"合格","不合格")
手順3:この数式の意味を理解する
C5>=C2
:「C5セル(学生の点数)がC2セル(合格ライン)以上かどうか」をチェックします"
合格"
:条件が正しい(点数が合格ライン以上)なら「合格」と表示します"
不合格"
:条件が間違っている(点数が合格ライン未満)なら「不合格」と表示します
合否判定のワンポイントアドバイス
- 合格ラインをセルに設定すると、後から基準を変更するときに便利です
- 複数の学生の合否判定を行うときは、関数をコピー&ペーストするだけで簡単に適用できます
- 固定の値を使いたい場合は、
=IF(C5>=70,"
合格","不合格")
のように直接数値を入力することもできます
実践例2:給与計算に応用してみよう
事務職でよくある給与計算への応用例を見てみましょう。

残業手当計算の例
手順1:基本情報を設定
- A列:社員名
- B列:基本給
- C列:勤務時間
- D列:標準勤務時間(例:160時間)
- E列:残業手当率(例:1.25倍)
手順2:残業手当計算のIF関数を入力
F2セルに以下の関数を入力します:
=IF(C2>D2, B2/D2*E2*(C2-D2), 0)
手順3:この数式の意味を理解する
C2>D2
:「実際の勤務時間が標準勤務時間を超えているかどうか」をチェックしますB2/D2*E2*(C2-D2)
:条件が正しい(残業あり)なら、時給×残業手当率×残業時間を計算します0
:条件が間違っている(残業なし)なら、残業手当は0円です
この例では、IF関数が実務でどのように活用できるかを示しています。
実践例3:条件別の色分け表示
テキストだけでなく、セルの色も条件に応じて変えたい場合は、条件付き書式設定を使いましょう。

手順1:対象範囲を選択
色を変えたいセル範囲(例:D5:D15)を選択します。
手順2:条件付き書式設定を適用
- 「ホーム」タブ→「条件付き書式設定」→「新しいルール」をクリック
- 「数式を使用して、書式設定するセルを決定」を選択
- 数式欄に「=D5="合格"」と入力
- 「書式」ボタンをクリックし、緑色の塗りつぶしを選択
- 「OK」をクリック






手順3:不合格の場合のルールも追加
同様の手順で、「=D5="不合格"」の場合に赤色にする条件も追加します。
これで合格者は緑、不合格者は赤で表示されるようになり、視覚的にもわかりやすくなります。
共有Excelファイルでの注意点:IF関数を効果的にチームで使うために
チームで共有するExcelファイルでIF関数を使う場合は、以下の点に注意しましょう。
分かりやすい数式名を使う
=IF(C5>=合格ライン,"合格","不合格")
上記のように、セル参照に名前を付けると(「C2」→「合格ライン」など)、他のメンバーが数式の意味を理解しやすくなります。


コメントを活用する
複雑なIF関数を使っている場合、セルにコメントやメモを追加して、その数式の目的や動作を説明しておくと親切です。

シートの保護を検討する
重要な数式が誤って変更されないように、シートの保護を設定しましょう。「校閲」タブ→「シートの保護」から設定可能です。数式セルのみロックし、データ入力セルは編集可能にすると使いやすくなります。
変数のセルを色分けする
IF関数で参照しているセル(合格ラインなど)を薄い色で塗りつぶすと、どのセルが条件判定に使われているかが一目で分かります。

応用:複数条件での判定(IFとAND/OR)
より複雑な条件判定を行いたい場合は、AND関数やOR関数と組み合わせることができます。
AND関数との組み合わせ(複数条件をすべて満たす場合)
例えば、点数が70点以上かつ出席率が80%以上の場合に合格としたい場合:
=IF(AND(B3>=70, C3>=0.8), "合格", "不合格")
これは「もし点数が70点以上 かつ 出席率が80%以上なら合格、そうでなければ不合格」という意味です。
OR関数との組み合わせ(複数条件のいずれかを満たす場合)
例えば、点数が90点以上または特別推薦がある場合に合格としたい場合:
=IF(OR(B11>=90, C11="あり"), "合格", "不合格")
これは「もし点数が90点以上あるいは特別推薦ありなら合格、そうでなければ不合格」という意味です。
より詳しいAND関数とOR関数の使い方は、専用の解説記事をご参照ください。
Excel 2019以降の新機能:スピル機能とIF関数
スピル機能とは?
スピル機能(英語では「Spill」)は、Excel 2019以降またはMicrosoft 365で使える便利な新機能です。一つのセルに入力した数式が、必要に応じて自動的に複数のセルに「あふれる(スピルする)」機能です。「動的配列(Dynamic Array)」機能の一部として導入されました。
IF関数とスピル機能の組み合わせ方
手順1:IF関数を入力する
D5セルに以下の関数を入力します:
=IF(C5:C7>=C2,"合格","不合格")
手順2:Enterキーを押す
すると、自動的にD5からD7までの3つのセルに結果が表示されます。

スピル機能の利点
- 作業の効率化
- 複数のセルに同じ関数をコピーする手間が省けます
- データが増えたときも自動的に範囲が拡大します
- ミス防止
- コピー忘れによるミスを防止できます
- データの追加や削除にも柔軟に対応します
- メンテナンスの容易さ
- 関数を修正するときは1カ所だけ変更すればOKです
- 絶対参照($マーク)を使う必要がなくなります
注意点
- スピル範囲内に他のデータがあると「#SPILL!」というエラーが表示されます
- スピル機能はExcel 2019以降またはMicrosoft 365でのみ使用できます
スピル機能の詳しい解説と応用例については、専用記事をご参照ください。
よくある質問(FAQ)
IF関数で数値と文字列を混在させることはできますか?
A: はい、可能です。例えば =IF(A1>10, 100, "範囲外")
のように、条件が真の場合は数値、偽の場合はテキストを返すことができます。
IF関数は最大いくつまでネスト(入れ子)にできますか?
A: Excel 2019以降では最大64個のIF関数をネストできますが、ネストが多くなると複雑で読みにくくなるため、多条件の判定にはIFS関数の使用をお勧めします。IFS関数を使えば、複数の条件を見やすく整理できます。
項目 | IF関数 | IFS関数 |
---|---|---|
対応Excel版 | すべてのバージョン | Excel 2019以降、Microsoft 365 |
基本構文 | =IF(論理式, 真の場合, 偽の場合) | =IFS(論理式1, 真の場合1, 論理式2, 真の場合2, ...) |
条件の数 | 基本は1つ(ネストで増やせる) | 最大127個 |
偽の場合の指定 | あり(第3引数) | なし(最後の論理式にTRUEを使用) |
可読性 | ネストすると複雑になる | 条件が多くても見やすい |
適した用途 | 単純な二者択一の判定 | 複数条件の段階的な判定 |
スピル機能が使えない古いバージョンのExcelでは、どうすればよいですか?
A: 通常の方法で最初のセルに関数を入力し、必要な範囲までドラッグしてコピーしてください。その際、必要に応じて絶対参照($マーク)を使用します。絶対参照を使うと、数式をコピーしても参照先が変わらないようにできます。
IF関数の結果を別の計算に使うことはできますか?
A: はい、可能です。例えば =SUM(IF(A1:A10>5,A1:A10,0))
のように、IF関数の結果を集計関数に渡すことができます。ただし、これは配列数式になるため、Excel 2019より前のバージョンではCtrl+Shift+Enterで確定する必要があります。
エラーが表示されるのを防ぐ方法はありますか?
A:
IFERROR関数と組み合わせることで、エラーを別の値に置き換えられます。例えば =IFERROR(IF(A1>0,1/A1,"0以下の値"), "エラー発生")
という数式では、A1が文字列や空白セルの場合に「#VALUE!」や「#DIV/0!」などのエラーが発生しますが、IFERROR関数によってすべて「エラー発生」というテキストに置き換えられます。エラー処理については専用のガイド記事で詳しく解説しています。
まとめ:IF関数をマスターして業務効率化を実現しよう
Excel IF関数は、条件に基づいて異なる結果を自動的に表示できる非常に便利な機能です。この記事で学んだポイントを整理しましょう:
- 基本の書式を覚える
=IF(
論理式, 値が真の場合, 値が偽の場合)
- 日常の「もし〜なら〜、そうでなければ〜」という判断と同じ発想です
- 実務での活用法
- 合否判定、給与計算など、日常業務で頻繁に使える場面があります
- 条件付き書式設定と組み合わせれば、視覚的にも分かりやすくなります
- 応用テクニック
IF関数の習得は、Excel初心者からスキルアップするための重要なステップです。まずは簡単な例から始めて、少しずつ実務に応用していくことで、自然と使いこなせるようになります。
ぜひ、この記事で紹介した例を参考に、ご自身の業務に取り入れてみてください。
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