【Excel初心者向け】IF関数の使い方完全ガイド|具体例でわかる条件分岐の基本

2025年5月1日

English version.

目次

はじめに:IF関数とは何か?

Excel IF関数は、「もし〇〇なら△△、そうでなければ□□」という日常の判断と同じように働く、とても便利な機能です。たとえば、「もし点数が70点以上なら合格、そうでなければ不合格」といった判定を自動化できます。

この関数はExcelの中でも特に重要で、VLOOKUP関数XLOOKUP関数と並んで、業務効率化に大きく貢献する機能です。

この記事では、Excel初心者の方でも理解できるよう、IF関数の基本から実践的な使い方まで、具体例を交えながら丁寧に解説します。

IF関数の基本:書き方と意味を理解しよう

IF関数の書式

=IF(論理式, 値が真の場合, 値が偽の場合)
  • 論理式…○か×で答えられる質問
  • 値が真の場合…条件に合う場合
  • 値が偽の場合…条件に合わない場合

この書式を日本語で表現すると: 「もし(条件)が正しければ(Aの結果)を表示し、正しくなければ(Bの結果)を表示する」

各引数の意味

引数必須/省略可説明
論理式必須「AはBより大きいか?」など、○か×か、で答えられる条件を設定します
値が真の場合必須条件が○(TRUE)のときに表示する結果を指定します
値が偽の場合必須条件が×(FALSE)のときに表示する結果を指定します

論理式でよく使う比較演算子

IF関数の論理式では、比較演算子と呼ばれる記号を使って条件を設定します。主に使用する比較演算子は以下の通りです:

演算子意味
=等しいA1=10(A1セルが10と等しいか)
より大きいA1>10(A1セルが10より大きいか)
>=以上A1>=10(A1セルが10以上か)
より小さいA1<10(A1セルが10より小さいか)
<=以下A1<=10(A1セルが10以下か)
<> 等しくないA1<>10(A1セルが10と等しくないか)

より詳しい演算子の種類や使い方については、Excelの演算子一覧と使い方をご参照ください。

実践例1:Excel IF関数で合否判定を作る

試験の点数に基づいて合否を自動判定する例で、IF関数の基本を学びましょう。

Excel画面で合格判定を行うIF関数の例。C2セルに合格ラインの70点、C5〜C7に学生の点数、D5〜D7にIF関数で判定した合否結果が表示されている

手順1:合格点を設定する

例えば、C2セルに「70」と入力して合格ラインを設定します。

手順2:IF関数を入力する

D5セルに以下の関数を入力します:

=IF(C5>=C2,"合格","不合格")

手順3:この数式の意味を理解する

  • C5>=C2:「C5セル(学生の点数)がC2セル(合格ライン)以上かどうか」をチェックします
  • "合格":条件が正しい(点数が合格ライン以上)なら「合格」と表示します
  • "不合格":条件が間違っている(点数が合格ライン未満)なら「不合格」と表示します

合否判定のワンポイントアドバイス

  • 合格ラインをセルに設定すると、後から基準を変更するときに便利です
  • 複数の学生の合否判定を行うときは、関数をコピー&ペーストするだけで簡単に適用できます
  • 固定の値を使いたい場合は、=IF(C5>=70,"合格","不合格")のように直接数値を入力することもできます

実践例2:給与計算に応用してみよう

事務職でよくある給与計算への応用例を見てみましょう。

Excel画面での残業手当計算例。社員名、基本給、勤務時間、標準時間、残業手当率、残業手当の各列があり、F2セルに=IF(C2>D2, B2/D2*E2(C2-D2), 0)という残業手当計算用のIF関数が表示されている

残業手当計算の例

手順1:基本情報を設定

  • A列:社員名
  • B列:基本給
  • C列:勤務時間
  • D列:標準勤務時間(例:160時間)
  • E列:残業手当率(例:1.25倍)

手順2:残業手当計算のIF関数を入力

F2セルに以下の関数を入力します:

=IF(C2>D2, B2/D2*E2*(C2-D2), 0)

手順3:この数式の意味を理解する

  • C2>D2:「実際の勤務時間が標準勤務時間を超えているかどうか」をチェックします
  • B2/D2*E2*(C2-D2):条件が正しい(残業あり)なら、時給×残業手当率×残業時間を計算します
  • 0:条件が間違っている(残業なし)なら、残業手当は0円です

この例では、IF関数が実務でどのように活用できるかを示しています。

実践例3:条件別の色分け表示

テキストだけでなく、セルの色も条件に応じて変えたい場合は、条件付き書式設定を使いましょう。

Excel画面での条件付き書式設定の例。左側は通常の合否判定結果、右側は条件付き書式で「合格」を緑背景、「不合格」を赤背景で表示した状態。条件付き書式設定ダイアログも表示されている

手順1:対象範囲を選択

色を変えたいセル範囲(例:D5:D15)を選択します。

手順2:条件付き書式設定を適用

  1. 「ホーム」タブ→「条件付き書式設定」→「新しいルール」をクリック
  2. 「数式を使用して、書式設定するセルを決定」を選択
  3. 数式欄に「=D5="合格"」と入力
  4. 「書式」ボタンをクリックし、緑色の塗りつぶしを選択
  5. 「OK」をクリック
「ホーム」タブ→「条件付き書式設定」→「新しいルール」をクリック
「ホーム」タブ→「条件付き書式設定」→「新しいルール」をクリック
「数式を使用して、書式設定するセルを決定」を選択
「数式を使用して、書式設定するセルを決定」を選択
数式欄に「=D5="合格"」と入力
数式欄に「=D5="合格"」と入力
「書式」ボタンをクリック
「書式」ボタンをクリック
緑色の塗りつぶしを選択し、「OK」をクリック
緑色の塗りつぶしを選択し、「OK」をクリック
「OK」をクリック
「OK」をクリック

手順3:不合格の場合のルールも追加

同様の手順で、「=D5="不合格"」の場合に赤色にする条件も追加します。

これで合格者は緑、不合格者は赤で表示されるようになり、視覚的にもわかりやすくなります。

共有Excelファイルでの注意点:IF関数を効果的にチームで使うために

チームで共有するExcelファイルでIF関数を使う場合は、以下の点に注意しましょう。

分かりやすい数式名を使う

=IF(C5>=合格ライン,"合格","不合格")

上記のように、セル参照に名前を付けると(「C2」→「合格ライン」など)、他のメンバーが数式の意味を理解しやすくなります。

セル参照に名前を付ける。「C2」→「合格ライン」
セル参照に名前を付ける。「C2」→「合格ライン」
セル参照に名前を付けた数式
セル参照に名前を付けた数式

コメントを活用する

複雑なIF関数を使っている場合、セルにコメントやメモを追加して、その数式の目的や動作を説明しておくと親切です。

数式にメモを追加
数式にメモを追加

シートの保護を検討する

重要な数式が誤って変更されないように、シートの保護を設定しましょう。「校閲」タブ→「シートの保護」から設定可能です。数式セルのみロックし、データ入力セルは編集可能にすると使いやすくなります。

変数のセルを色分けする

IF関数で参照しているセル(合格ラインなど)を薄い色で塗りつぶすと、どのセルが条件判定に使われているかが一目で分かります。

IF関数で参照しているセルを薄い黄色で塗りつぶし

応用:複数条件での判定(IFとAND/OR)

より複雑な条件判定を行いたい場合は、AND関数やOR関数と組み合わせることができます。

AND関数とOR関数の違いを示す図解。左側にAND関数の例(2つの条件が両方満たされる場合のみTRUE)、右側にOR関数の例(2つの条件のいずれかが満たされればTRUE)が図示されている

AND関数との組み合わせ(複数条件をすべて満たす場合)

例えば、点数が70点以上かつ出席率が80%以上の場合に合格としたい場合:

=IF(AND(B3>=70, C3>=0.8), "合格", "不合格")

これは「もし点数が70点以上 かつ 出席率が80%以上なら合格、そうでなければ不合格」という意味です。

OR関数との組み合わせ(複数条件のいずれかを満たす場合)

例えば、点数が90点以上または特別推薦がある場合に合格としたい場合:

=IF(OR(B11>=90, C11="あり"), "合格", "不合格")

これは「もし点数が90点以上あるいは特別推薦ありなら合格、そうでなければ不合格」という意味です。

より詳しいAND関数とOR関数の使い方は、専用の解説記事をご参照ください。

Excel 2019以降の新機能:スピル機能とIF関数

スピル機能とは?

スピル機能(英語では「Spill」)は、Excel 2019以降またはMicrosoft 365で使える便利な新機能です。一つのセルに入力した数式が、必要に応じて自動的に複数のセルに「あふれる(スピルする)」機能です。「動的配列(Dynamic Array)」機能の一部として導入されました。

IF関数とスピル機能の組み合わせ方

手順1:IF関数を入力する

D5セルに以下の関数を入力します:

=IF(C5:C7>=C2,"合格","不合格")


Excel画面でスピル機能を使用したIF関数の入力例。D5セルのみに=IF(C5>=C2,"合格","不合格")という範囲指定した数式が入力されている

手順2:Enterキーを押す

すると、自動的にD5からD7までの3つのセルに結果が表示されます。

Excel画面でスピル機能によりD5セルの数式がD5からD7まで自動的に適用された結果。各セルに合格・不合格の判定結果が表示されている

スピル機能の利点

  1. 作業の効率化
  1. 複数のセルに同じ関数をコピーする手間が省けます
  2. データが増えたときも自動的に範囲が拡大します
  3. ミス防止
  1. コピー忘れによるミスを防止できます
  2. データの追加や削除にも柔軟に対応します
  3. メンテナンスの容易さ
  1. 関数を修正するときは1カ所だけ変更すればOKです
  2. 絶対参照($マーク)を使う必要がなくなります

注意点

  • スピル範囲内に他のデータがあると「#SPILL!」というエラーが表示されます
  • スピル機能はExcel 2019以降またはMicrosoft 365でのみ使用できます

スピル機能の詳しい解説と応用例については、専用記事をご参照ください。

よくある質問(FAQ)

IF関数で数値と文字列を混在させることはできますか?

A: はい、可能です。例えば =IF(A1>10, 100, "範囲外") のように、条件が真の場合は数値、偽の場合はテキストを返すことができます。

IF関数は最大いくつまでネスト(入れ子)にできますか?

A: Excel 2019以降では最大64個のIF関数をネストできますが、ネストが多くなると複雑で読みにくくなるため、多条件の判定にはIFS関数の使用をお勧めします。IFS関数を使えば、複数の条件を見やすく整理できます。

項目IF関数IFS関数
対応Excel版すべてのバージョンExcel 2019以降、Microsoft 365
基本構文=IF(論理式, 真の場合, 偽の場合)=IFS(論理式1, 真の場合1, 論理式2, 真の場合2, ...)
条件の数基本は1つ(ネストで増やせる)最大127個
偽の場合の指定あり(第3引数)なし(最後の論理式にTRUEを使用)
可読性ネストすると複雑になる条件が多くても見やすい
適した用途単純な二者択一の判定複数条件の段階的な判定

スピル機能が使えない古いバージョンのExcelでは、どうすればよいですか?

A: 通常の方法で最初のセルに関数を入力し、必要な範囲までドラッグしてコピーしてください。その際、必要に応じて絶対参照($マーク)を使用します。絶対参照を使うと、数式をコピーしても参照先が変わらないようにできます。

IF関数の結果を別の計算に使うことはできますか?

A: はい、可能です。例えば =SUM(IF(A1:A10>5,A1:A10,0)) のように、IF関数の結果を集計関数に渡すことができます。ただし、これは配列数式になるため、Excel 2019より前のバージョンではCtrl+Shift+Enterで確定する必要があります。

エラーが表示されるのを防ぐ方法はありますか?

A: IFERROR関数と組み合わせることで、エラーを別の値に置き換えられます。例えば =IFERROR(IF(A1>0,1/A1,"0以下の値"), "エラー発生") という数式では、A1が文字列や空白セルの場合に「#VALUE!」や「#DIV/0!」などのエラーが発生しますが、IFERROR関数によってすべて「エラー発生」というテキストに置き換えられます。エラー処理については専用のガイド記事で詳しく解説しています。

まとめ:IF関数をマスターして業務効率化を実現しよう

Excel IF関数は、条件に基づいて異なる結果を自動的に表示できる非常に便利な機能です。この記事で学んだポイントを整理しましょう:

  1. 基本の書式を覚える
  1. =IF(論理式, 値が真の場合, 値が偽の場合)
  2. 日常の「もし〜なら〜、そうでなければ〜」という判断と同じ発想です
  3. 実務での活用法
  1. 合否判定、給与計算など、日常業務で頻繁に使える場面があります
  2. 条件付き書式設定と組み合わせれば、視覚的にも分かりやすくなります
  3. 応用テクニック
  1. AND/OR関数と組み合わせて、複数条件での判定が可能です
  2. スピル機能(Excel 2019以降)を使えば、作業効率がさらに向上します

IF関数の習得は、Excel初心者からスキルアップするための重要なステップです。まずは簡単な例から始めて、少しずつ実務に応用していくことで、自然と使いこなせるようになります。

ぜひ、この記事で紹介した例を参考に、ご自身の業務に取り入れてみてください。

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